(※写真はイメージです/PIXTA)

診療所を開設するにあたっては、行政へのさまざまな届け出書の提出が必要です。どのようなものが必要となるのか、その種類と内容について、法的論拠をもとに2回に分けて解説します。2回目となる今回は、「④診療所使用許可申請書」「⑤施設基準届出書」「⑥生活保護法に基づく指定医療機関の指定申請等」「⑦麻薬管理者・施用者申請書」「⑧結核医療機関指定申請書」「⑨労災保険指定医療機関指定申請書」について取り上げます。本連載は、コスモス薬品Webサイトからの転載記事です。

④診療所使用許可申請書…行政の審査を経る必要がある点に注意を

患者を入院させるための施設を設ける場合には、別途、許可が必要となります。患者を入院させるための施設を有する診療所は、その構造設備について、その所在地を管轄する都道府県知事の検査を受け、許可証の交付を受けた後でなければ、これを使用してはならない(医療法27条)とされています。

 

また、都道府県知事は、診療所の開設者から、医療法27条の規定による検査を受けたい旨の申出があったときは、特別の事情がない限り、その申出を受けた日から10日以内に同条の検査を行わなければならないと定めています(医療法施行規則23条)。この申請は、「許可」であるため、行政の審査を経る必要がありますので留意が必要です。

 

なお、医療法27条に違反した場合には、20万円以下の罰金に処される(医療法89条1号)とされています。

 

⑤施設基準届出書

また、診療報酬の請求との関係で、施設基準届出書の提出も必要となります。施設基準届出書は、診療報酬の点数に関わるものであり、診療行為の中には、一定の人員や基準を満たしている旨を地方厚生局に届け出て初めて点数を算定できるものがあります。この満たすべき人員や設備を施設基準といいます。

 

施設基準の届出が必要なものには、点数表に「別に厚生労働大臣が定める施設基準に適合しているものとして保険医療機関が地方厚生局等に届け出た~」という一文が入っていますので、診療所においてどのような診療を行うのかを踏まえて、しっかりと確認しておく必要があります。

 

なお、大きく分ければ、基本診療料の届出と、特掲診療料の届出が存在し、厚生労働省の各厚生局のページに詳細が記載されているため、十分な確認が必要となります。例えば、関東信越厚生局の施設基準の届出に関する案内は下記のページなどでされています。

 

診療報酬改定に関するお問い合わせ(ご質問)・施設基準等の届出について(厚生労働省 関東信越厚生局)(https://kouseikyoku.mhlw.go.jp/kantoshinetsu/iryo_shido/r04kaitei_00001.html)

 

⑥生活保護法に基づく指定医療機関の指定申請等

生活保護法に基づく指定医療機関となる場合にも手続が必要です。都道府県知事は、診療所について、「生活保護法による医療扶助のための医療を担当させる機関を指定する(生活保護法49条)とし、この指定は、厚生労働省令で定めるところにより、診療所の開設者の申請により行う(生活保護法49条の2第1項)」とされています。この指定医療機関になることを希望する場合には、行政への申請を行う必要があります。

 

そして、厚生労働大臣(又は都道府県知事)は、この申請があった場合において、「生活保護法49条の2第2項各号のいずれかに該当するときは、指定をしてはならない(生活保護法49条の2第2項及び同条4項)」とし、また、生活保護法49条の2第3項各号のいずれかに該当するときは、前条の指定をすることができないと規定されています(生活保護法49条の2第3項及び同条4項)。

 

一部の例を挙げますと、開設者が禁錮以上の刑に処せられ、その執行を終わり、又は執行を受けることがなくなるまでの者である場合や、国民の保健医療若しくは福祉に関する法律で政令で定めるものの規定により罰金の刑に処せられ、その執行を終わり、又は執行を受けることがなくなるまでの者である場合、開設者が生活保護法の規定により指定医療機関の指定を取り消され、その取消しの日から起算して5年を経過しない者である場合、開設者が指定の申請前5年以内に被保護者の医療に関し不正又は著しく不当な行為をした場合などには、欠格事由となります。そのため、指定の要件を満たしているかどうかの事前確認をしておく必要があります。

 

⑦麻薬管理者・施用者申請書…疾病治療で麻薬等を取り扱う場合には必須

麻薬等を取り扱う場合にも申請が必要となります。具体的には、麻薬及び向精神薬取締法には麻薬施用者、麻薬管理者の免許は都道府県知事が、それぞれ麻薬業務書ごとに行う(3条)とされており、免許については、法3条2項に掲げる者(医師を含む)でなければ得ることができないとされています。

 

そのため、疾病治療の目的で、業務上麻薬の施用等を行う際には、麻薬施用者免許の申請が必要になります。また、診療所に2人以上の麻薬施用者をおく場合には、別に麻薬管理者免許の申請が必要になります。

 

⑧結核医療機関指定申請書…結核の公費負担医療を行う場合には必須

結核の公費負担医療を行う場合には、結核指定医療機関の指定を受ける必要があります。感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律において、結核指定医療機関の指定は、厚生労働大臣の定める基準に適合する診療所について、その開設者の同意を得て、都道府県知事が行うものとされています(38条2項)。この指定がなされたときは、公費負担医療(結核)を担当しなければならないとされています。

 

⑨労災保険指定医療機関指定申請書…労災指定病院を目指すなら必要に

労災保険法の規定による療養の給付を行うため、労災保険指定医療機関になるためには、労災保険法施行規則11条1項の規定に基づき、労災保険指定医療機関指定申請書を各都道府県の管轄する労働局に対して提出する必要があります。

 

労災指定医療機関となった場合には、労災の治療などにおいて、労災保険の範囲内の治療を労災保険給付の現物給付(医療行為という形)で提供することができます。そのため、治療を受ける労働者は医療機関で治療費を負担する必要がないことになります。

 

なお、医療保険制度には、社会保険における医療保険のほかに、公的扶助、社会福祉、公衆衛生等における公費負担医療制度がありますが、下記の代表的な公費負担医療を行うために行政への申請などを行うことも検討する必要があります。

 

① 自立支援医療

② 療養介護医療

③ 難病患者への医療支援

④ 小児慢性特定疾病医療支援

⑤ 肝炎治療特別促進事業など

 

 

 

山口 明
日本橋中央法律事務所  弁護士

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