(※写真はイメージです/PIXTA)

銀行での資金調達の際、通常は事業計画書を作って銀行へ持参しますが、事業計画書は2回作ることがお勧めです。1回目は状況把握と現状認識のため、2回目は、より実践的な戦略を立てることが目的です。2回目の事業計画書の効果についてみていきます。本連載は、コスモス薬品Webサイトからの転載記事です。

1回目と2回目…それぞれの事業計画書の目的とは?

◆1回目の事業計画書の作成目的

開業計画の全体像を把握するとともに、予算を立てることにより今後の価格交渉に利用する。

 

(※前回の記事『クリニックの事業計画書「2回作成」が勝率を上げる納得の理由…税理士が解説』にイメージを掲載しています)

 

◆2回目の事業計画書の作成目的

1回目の事業計画書をさらにブラッシュアップし、開業成功への具体的な戦略立案と行動目標を立てる。これを銀行融資のときに利用する。

 

2回目の事業計画書は、1回目の事業計画書をさらにブラッシュアップします。事業計画書に「魂」を入れ、業者や銀行との交渉に万全の態勢で臨むのです。周到な事業計画書が手元にあれば、「しまった!」と後悔する局面が激減します。

 

以下、事業計画書の各ページ作成のポイントを解説します。

参考資料:事業計画内容のイメージ

事業計画書の基本構成として、下記のものを推奨しています。

 

[図表1]事業計画内容のイメージ

 

0p 表紙

1p 院長プロフィール

2p 近隣競合医院について

3p 地域医療ニーズの予測

4p 他院との差別化と自院のポジショニング

5p 来院患者様獲得のためのロードマップ

6p 資金調達~収支計算

1ページ:「ドクターのプロフィール」の作成術

まず、ドクターのプロフィールを作ります。

 

●学歴

●職歴

●医師を目指したきっかけ

●〇〇地域の医療に貢献できること

●実績(手術件数、学会での発表、原稿執筆など)

 

主にこれらを記載します。この内容は、後日作成するHPの原稿(院長紹介のページ)にも使いますので、ドクターの人柄が想像できるよう、なるべく詳細に書いた方がいいでしょう。

2ページ:競合医院の状況の整理

近隣の競合医院について、一覧表にまとめます。

 

[図表2]近隣の競合医院についての一覧表のイメージ

 

このような表を作っていく過程で、近隣競合医院の状況が把握できます。

 

◆ご参考

多くの地域では「(県名)医療情報ネット」と検索すると、その地区の医療機関の詳細が検索できるサイトが出てきます。このサイトを使うとあまり時間をかけずに近隣の競合医院の情報を収集することができます。

 

例として福岡県のサイトはこちらになります。

 

ふくおか医療情報ネット (https://www.fmc.fukuoka.med.or.jp/)

3ページ:地域医療ニーズの予測

10年後、20年後の地域医療ニーズがどう推移していくのかもご自身なりに予測してみてください。各地域における将来の医療需要の予測は、このサイトで調べることができます。

 

地域医療情報システム(日本医師会) (jmap.jp)

 

10~20年後の地域医療ニーズを予測し、近隣の競合院の状況をなるべく詳細に把握することで、地域医療における自院のポジショニングを考えていきましょう。

4ページ:競合医院との差別化とポジショニング

競合医院の一覧表を作成し、地域の医療ニーズを予測することにより、「自院はどのような医療ニーズに応えていくか」ということに考えを進めることができます。

 

【例】

●休診日をいつにするか

●診療時間を何時から何時までにするのか、昼休みの時間はどうするか

●他院がカバーできていない地域の医療ニーズは何か

●上記③を踏まえて当院で提供可能な医療は何か など

 

◆ご参考

診療日や診療時間の設定は、患者様獲得にとっても重要ですが、スタッフ採用についてとても重要です。

 

ドクターは努力家の方が多いので、「(頑張って)日曜も診療しよう」「(頑張って)夜遅い時間まで診療しよう」と考える方がおられますが、単純に診療時間を長くすることによる他院との差別化はお勧めしません。

 

あまりにも診療時間を他院より長くすると、就職先として貴院を見ているスタッフからは「この医院は診療時間が長いから、面接に応募するのは辞めておこう」と判断されるなど、今度はスタッフの応募が少なくなります。スタッフ採用も考えて診療時間を設定するようにしましょう。

5ページ:来院患者獲得のためのロードマップの作成

すでに1回目に作った事業計画書で、1日あたりの目標来院患者数が〇名と計算できているはずです。その目標を達成するためのロードマップを作成します。

 

①他の医療機関と連携し集患のルートを作る

自分の力だけで患者様を集めようとすると、途方もない時間と莫大なエネルギーが必要です。厳しいことをいうようですが、「患者さんのことを想い、日々誠実な対応をすれば患者さんは増えるだろう」と単純に考えるのは呑気な感じがします。近隣住民の口コミが発生するのは、どんなに速くても開業後半年以降です。

 

開業すればこれまで経験したことのないスピードで手元のお金が減っていき、売上獲得と資金流出のどちらが勝つかという「鬼ごっこ」が始まります。確かに「誠実な診療」をすれば患者さんは徐々に増えていくのですが、実は口コミが発生する前に資金が枯渇するのです。

 

そこでまずは、近隣の医療機関とお互いに患者を紹介し合えるような連携ができないかを考えましょう。

 

開業当初から患者さんが多いクリニックの中には、すでに開業前の段階でこのような集患のルートづくりに成功した方が多いように思います。

 

一般的には地域の中核病院との連携をイメージしやすいですが、近隣の他の診療科のクリニックとの連携し、お互いに患者を紹介し合えないかどうかも是非考えてみてください。

 

例えば、親和性が高い診療科は、

 

★内科と眼科

★小児科と産婦人科・小児歯科

★歯科と皮膚科(金属アレルギーなどの症例の場合)

 

などです。

 

連携したい医療機関が決まると、その医療機関にどのタイミングで、どのように連携話を切り出すかという次のステップに考えが進んでいくはずです。

 

②内覧会の実施

内覧会なんてやったことがないし、恥ずかしいし、面倒だ…というのがドクターの本音なのではないでしょうか。しかし、内覧会は行うことを強くお勧めします。

 

内覧会の動員人数は、開業後の来院患者数に大きく影響を与えます。ちなみに筆者の顧問先クリニックで、内覧会を行った医院と行わなかった医院の開業後半年間の収入を比較したところ、1,500万円の開きがありました。

 

内覧会業者に運営を依頼すると、普通は200万~300万円の費用がかかりますが、開院後の集患効果を考えますと、ペイするケースがほとんどだと思います。

 

内覧会の案内では、ハッピを着た女性が通行人に風船を渡している光景を目にすることがあります。「商売っ気が強すぎて、なんか抵抗感があるな…」と感じられているドクターも多いと思います。

 

どうしても抵抗感がある方は「あまり派手なアピールはしないでください」と内覧会業者に頼むことも可能ですし、ご自分で企画した手作りの内覧会を開催される方もおられます。

 

いずれにしても、内覧会の近隣住民の動員人数と、開院後の来院患者数には強い相関関係がありますので、内覧会は開催することを強くお勧めします。

 

③その他

そのほかの方法としては、

 

★HPやインスタグラム等のSNSによる告知

★近隣の有力者(町内会長、老人会長、近隣の商店など)へのあいさつ

★開院予定の看板

 

等があります。

 

以上、2回目の事業計画書の作り方について述べさせていただきました。この記事が開業されるドクターの参考になれば幸いです。

6ページ:資金調達、収支計算

こちらは、1回目に作成したものをもとに、具体的な数字を掲載します。

 

参照:『クリニックの事業計画書「2回作成」が勝率を上げる納得の理由…税理士が解説』~事業計画書ひな形

 

 

鶴田 幸之
メディカルサポート税理士法人  代表税理士