希望する大学への進学をあきらめた高校生のAさん
地方に住む高校2年生の17歳のAさんは、卒業後には家を出て東京の大学に進むことを希望していました。しかし、48歳の父親が突然リストラにあってしまい、なんとか別の会社で働き始めましたが、年収は900万円からおよそ400万円にダウンしてしまいます。
高校進学を控える中学3年生の妹がおり、住宅ローンの負担も大きいことから、Aさんが希望する東京の大学へはとても進ませることができない状態となってしまいました。
Aさんは、普段プライドの高い父親から「諦めてくれ」と土下座され、驚きとともに非常に胸が痛くなりました。父親は、教育の重要性をよくわかっている人だったので、なおさらAさんに申し訳なく思ったのでしょう。
Aさんは、国立大学を卒業して大手企業に勤務し、優秀な人間だと思って尊敬していた父親がリストラにあったことがなによりもショックで、卒業後の自分にも大きな不安を感じてしまいます。奨学金を借りてもともと希望していた大学に進む、という選択肢もありましたが、
「なんとなく東京の大学に憧れていたけど本当によかったのかな」
「いい大学に行けたとしても自分も将来リストラされてしまうのかな。なんて残酷なんだろう」
「自分がやりたい仕事はなんだろう」
と、自分の将来について真剣に考えるようになり、悩んだ末に、東京の大学進学を断念して地元のIT系の専門学校に進むことを決めたそうです。
「父親を見て、誰がいつリストラされてもおかしくない時代なんだと思いました。なにか技術を持っておく必要があるな、と切実に感じます。就職できたら親に温泉旅行をプレゼントしてあげたいです」とAさんはいいます。
親の学歴が影響する子どもの進学率
なお、収入が高い家庭であれば、必ず子どもを進学させるか、というとそれも違うようです。
世帯年収が高くても、両親がともに大卒の場合と両親がともに高校卒業(中学卒業も含む)の場合とでは、大学進学希望率に30〜40ポイントの大きな差が生じています。
※国立教育政策研究所「高校生の高等教育進学動向に関する調査研究」より引用
もちろん、学歴がなくても成功している人は数多くいます。一方で、大学を卒業したり資格を取得したりしてもその知識をうまく活かせない人もいます。
しかし、昔とちがって「終身雇用」や「年功序列」も崩壊した現在、子どもに稼いでいく力を付けるためのスキルや教育を受けさせることは非常に重要です。
筆者は社会人になってから資格をいくつか取りましたが、若い人のなかでも働きながら将来のために勉強して資格にチャレンジする人もたくさんいます。定年退職や再雇用のあとに仕事をしたくても希望する仕事がなく、そのままリタイアや年金生活に入ってしまう人も何人も見てきました。
働き続けることが年々重要になってきている時代ですから、生涯の働き方について年末年始に親子で話し合うのもよいのではないでしょうか。
川淵 ゆかり
川淵ゆかり事務所
代表