定年延長に伴い、50代以降で「役職定年」を設ける企業が増えています。この役職定年によって、その先のライフプランが大きく変わってしまうリスクもあるといいます。特に、出世競争が激しい銀行業界では、50代以降のセカンドキャリアが厳しいものとなるケースが多いようです。FP1級の川淵ゆかり氏が、銀行員であるAさんの事例とともに、役職定年について解説します。
年金19万円、退職金2,500万円だが…年収1,800万円だった53歳・メガバンク元支店長が直面する〈役職定年〉という地獄「とうとうこの時がきたか。」【FPが解説】 (※写真はイメージです/PIXTA)

いまの50代の頭を悩ませる「役職定年」

サラリーマンも50代になると定年を意識しはじめ、その後の生活を考え始める世代です。昭和の時代でしたら「定年後は趣味などでゆっくり過ごそう」などと老後の生活を思い描ける余裕がありました。しかし、初婚年齢が上がり、初産年齢が上がり続けているいまの日本では、60代を迎えても住宅ローンや子供の教育費用に頭を悩ませる人は多いものです。

 

さらに、50代での役職定年や定年後再雇用での年収の大幅ダウンは家計に大きなダメージを与えます。サラリーマンのなかでも銀行員は出世競争が特に厳しいといわれる職業です。厳しい受験戦争をくぐり抜けて入行した優秀な方は、将来の重役を目指して毎日頑張っています。

 

特にいまの50代はちょうどバブル期の入行組で、同期だけでもかなりの数に上るのに、その後のバブル崩壊で大手銀行同士の合併が相次いで銀行そのものの数が減ってしまうことでポストの数も大幅に減少してしまいました。

 

40代を過ぎて、転職や出向などを経験する人も少なくありませんが、厳しい競争を勝ち抜いて役職に就いたとしても、その後の「役職定年」で給料が大きくダウンしてしまいます。

「役職定年」導入でライフプランが崩壊

いまは上場企業の約4割が「役職定年」を導入しているといわれています。特に医薬品・電気・ガス・銀行といった昔ながらの業種では導入率が高まっています。役職定年が導入された背景には、長引く景気後退もありますが、定年の延長も大きく影響しています。

 

特に定年延長は人件費を増加させることになり、限られた役職枠にシニア社員が長期間居続けることになってしまい、これが若手社員のやる気を奪ったり、優秀な社員は転職したりといったことにつながってしまいました。そこで社内の若返りや人件費の削減を目的に、役職定年を導入する企業が増えました。

 

ですが、当然この役職定年に不満を感じる人は一定数存在します。

 

・年収が下がったのに仕事の内容はほとんど変わらない。

・仕事にやりがいが感じられない。

・部下が上司になってしまい、仕事がやりづらい。

 

こういった理由で役職定年後に仕事が続けられずに定年前に仕事を辞めてしまう人もいます。役職定年による収入ダウンや定年前の退職は、マネープランに大きく影響し、住宅ローンが残っていたり、お子さんの教育費にお金がかかったりしている家庭にはかなり大きなダメージとなります。