注文住宅の一次取得者の平均年齢は39.5歳。多くの人が30年超のローンを組んでいます。そのままいけば完済年齢は70歳前後になりますが、なかには繰り上げ返済等を組み合わせ、年金生活突入前に返し終えてしまう人も。しかし、頑張ってローンを返しても、それだけではマイホームは「終の棲家」にならないばかりか、“思わぬ悲劇”の現場になるリスクも。詳しくみていきましょう。
住宅ローン「月13万円」“頑張って”65歳で完済も…マイホームを「終の棲家」にするには〈まだまだお金がかかる〉ワケ (※写真はイメージです/PIXTA)

65歳でローン完済も…マイホームを「終の棲家」にするために必要なコストとは?

月々の返済負担が重くなるのを覚悟の上で短い期間のローンを組んだり、定期的に繰上返済を行ったり……頑張って65歳までに住宅ローンを完済したとしても、マイホームを「終の棲家」にするためには、残念ながらまだまだお金がかかりそうです。

 

まずは定期的なメンテナンス。戸建ての場合、新築から15年も経てば修繕が必要になります。修繕の規模によるものの、複数の職人を呼び、足場を組んで行うような屋根・外壁の全面的な塗装には100万~150万円ほどの費用がかかるケースも。15年に1回ということは、ローンの返済期間中にも1~2回は、住宅ローンの返済と別に100万円単位の出費を覚悟しておく必要があるのです。

 

また、足腰が弱くなる老後もマイホームに暮らし続けるのであれば、手すりの設置や風呂・トイレ等の「バリアフリー化」も必要になるでしょう。前出の国土交通省の調査でリフォームの項目をみると、リフォームを実施した世帯の世帯主の年代としては、「60代以上」が53.7%で最多でした。なお、世帯の内訳としては「高齢者のみ」の割合が47.5%でもっとも多くなっています。

 

次に、リフォームを実施した世帯に「リフォーム後の高齢者対応設備の有無」を尋ねると、「手すりがある」は25.4%、「段差のない室内」は15.1%、「車いすで通行可能な廊下等」は11.0%、「浴室・トイレの暖房」が21.9%。また「すべてを満たす」が4.0%でした。

 

高齢者向けのリフォームは、「手すりの設置」のような軽微なものから、室内外の段差解消や浴室・トイレの高齢者向けの改築など、大規模な工事を要するものまでさまざま。手すりを設置するだけなら数万円で済むこともありますが、全面的なリフォームとなれば、総額1,000万円以上の費用が必要になることも。

 

ただ、このコストを惜しんでリフォームを行わずにいると、マイホームが思わぬ悲劇の現場になってしまうかもしれません。

 

2015年からの5年間、東京消防庁管内において、転倒が原因で搬送された高齢者は27万3,491人のうち「居室・寝室」で2万2,902人、「玄関・勝手口」では3,187人、「廊下などの通路」では2,342人と、自宅で転倒したという人は少なくありません。厚生労働省の調べでは、要介護になった原因として「骨折・転倒」が3番目にランクインしており、高齢者の転倒は、現役世代のそれとは比べ物にならないリスクを孕んでいることがわかります。

 

大切なマイホームを「終の棲家」とするためには、ローン返済と並行して、老後に向けた住環境整備のためのコストを織り込んだマネープランを検討することが不可欠といえそうです。