日本の高齢化率は上昇の一途をたどっていますが、あらゆるシーンで高齢化が進んでいます。それは「犯罪」においても同様。いまどきの高齢者による犯罪事情、みていきましょう。
「運賃不足してますよ」に76歳男性、逆上…年金月14万円、恐ろしくバイオレンス「暴走老人」の実態 (※写真はイメージです/PIXTA)

刑法犯検挙数は減少傾向だが…高齢化率は一貫して上昇

法務省『令和4年版 犯罪白書』で、年齢層別の刑法犯検挙人員をみていくと、そのなかで高齢者が占める割合は2021年で23.6%。高齢者の検挙人数は、2008年に4万8,805人でピークを迎えたのち、高止まりの状況が続いていましたが、2016年以降は減少。2021年は4万1,267人でした。このうち、70歳以上は、2011年高齢者の検挙人員の65%以上を占めるようになり、2021年は76.3%でした。

 

刑法犯検挙人数は2000年代初頭をピークに一貫して減少傾向にあるのに対し、高齢者の検挙人数は2010年あたりからほぼ横ばいのため、刑法犯検挙数に対する高齢者率は増加の一途を辿っています。人口のボリュームも高齢者が多くなっていることも、犯罪における高齢者率が上がっている理由。「最近、(犯罪に手を染める)高齢者が多いなあ」と感じるのも、それが一因だといえるでしょう。

 

そんな日本の高齢者、どのような犯罪に手を染めてしまっているのか。最も多いのが「窃盗」で、高齢者の刑法犯検挙数に対して69.9%。その内訳は万引きが51.0%、万引き以外が18.9%となっています。窃盗に続くのが「傷害・暴行」で14.5%。「横領」4.9%、「詐欺」1.8%と続きます。また男女別にみていくと、男性は「傷害・暴行」が多く、19.4%、女性は「窃盗」が多く、89.0%。そのうち「万引き」は72.3%と圧倒的です。

 

犯罪に手を染めてしまう“暴走老人”。その内容をみてみると、窃盗が圧倒的であることが分かります。その背景には個々、色々あるでしょうが、「生活苦」もそのひとつ。厚生労働省『令和4年 国民生活基礎調査』によると、高齢者世帯において「生活が苦しい」と回答したのは48.3%。約半数にのぼります。

 

終わりが見えない物価高で、厳しくなるばかりの高齢者の生活。これが少しでも上向けば、(冒頭に紹介したような傷害・暴行は別として)高齢者による犯罪も減るかもしれません。