ひと口に「老後」といっても、その長さは20~30年。その間、幾度かライフステージの大きな変化が訪れますが、最終ステージといえるのが、配偶者を亡くしたその後。いわゆる「お1人さま」になっても困らないようなマネープランを考えておく必要があります。そのカギを握るのが「遺族年金」。しかし「そんなのあてにできるわけ、ないでしょ」と嘆く人も。みていきましょう。
年上夫に先立たれた「80代の内縁妻」…待ち受けるのは「遺族年金ゼロ」の悲惨な老後か? (※写真はイメージです/PIXTA)

夫を亡くした80代妻「7~8年のお1人さま生活」を支える「遺族年金」だが…

そして「老後のサードステージ」であり、最終ステージになるのが、配偶者が亡くなった後の生活。前述のとおり、平均的な日本人夫婦であれば、7~8年、夫を亡くした妻の1人きりの生活が待っています。

 

配偶者が元会社員や公務員で厚生年金をもらっていたなら、遺族厚生年金がもらえるでしょう。厚生労働省によると、遺族年金の平均受給額は月8万円ほど。自身の国民年金と合わせると、月14万円程度になるでしょうか。 80歳を超えた女性の一人暮らし。持ち家であれば十分な生活費かもしれません。

 

遺族年金には「遺族基礎年金」と「遺族厚生年金」の2種類があり、遺族基礎年金には子の要件があるので、基本的に妻が老後に受け取ることができるのは「遺族厚生年金」。遺族基礎年金同様、「①死亡した人に生計を維持されていた」遺族であること、また遺族のうち「②最も優先順位の高い人」が受け取ることができます。

 

②の優先順位は、以下の通り。

 

1.子*1のある配偶者

2.子*1

3.子*1のない配偶者

4.父母*2

5.孫*1

6.祖父母*2

 

*1:18歳になった年度の3月31日までにあるか、20歳未満で障害年金の障害等級1級または2級の状態

*2:55歳以上。受給開始は60歳から

 

ここで問題になるのが、昨今、増えているという結婚のスタイル。

 

ーーわたしたち、籍を入れてなかったんです

 

そう、事実婚。「相手の籍に入るというのはイヤ」「姓が変わるのはイヤ」「自分たちらしくありたい」……などと、昨今は籍を入れない夫婦が増えているといわれています。戸籍上の妻ではない、内縁の妻。

 

ーー法律上の妻ではないんだから、遺族年金なんてもらえないんでしょ

 

夫が亡くなったあとの年金収入は自身の国民年金、月6万円だけ。どんどん減っていく貯蓄に、不安を募らせる晩年……なんとも、悲惨な老後でしょうか。しかし、厚生年金保険法3条2項には『厚生年金保険法において、配偶者には、婚姻の届出をしていないが,事実上婚姻関係と同様の事情にある者(以下「事実婚関係にある者」という。)を含むものとする。』とあります。つまり事実婚でも、遺族厚生年金の対象になるということが記されています。「遺族年金なんて」と、悲観する必要はまったくありません。

 

実際に事実婚で厚生年金の対象になるかのポイントは2つ。まず「事実上婚関係にある者」かどうか。これが認められるのは、「①当事者間に、社会通念上、夫婦の共同生活と認められる事実関係を成立させようとする合意があること」「②当事者間に、社会通念上、夫婦の共同生活と認められる事実関係が存在すること」という要件が当てはまることが必要です。

 

次に「生計維持関係にある者」かどうか。これが認められるには、収入要件と生計同一要件を満たしていることが必要です。「籍を入れなかっただけで、ずっと生活を共にしてきた」という内縁の妻であれば、要件から外れることはないでしょう。

 

内縁関係を証明する資料を用意する必要があるなど、通常の夫婦に比べて手間はかかりますが、事実婚夫婦も遺族厚生年金の対象。老後の最終ステージも安心です。