世帯年収1,200万円の“勝ち組夫婦”…7,000万円フルローンで注文住宅を購入
上記の国土交通省の調査で新築注文住宅の世帯主(一次取得者)の平均年齢をみてみると39.5歳。ここでは平均に近い40歳の世帯主が、頭金を入れずにフルローンで、都内に7,000万円の新築注文住宅を建てた場合のローン返済をシミュレーションしてみましょう。
金利0.5%、返済方式は元利均等で、30年ローンを組んだとすると、利息分は539万5,581円。毎月の返済額は20万9,432円となります。年金生活に入る前にローンを完済しようと25年ローンを組んだとすると、利息分は448万545円。毎月の返済額は24万8,268円に上ります。
厚生労働省の調査をみると、都内勤務のサラリーマンの平均年収は推定666万円。そもそも、その給与水準の会社員が40歳時点で7,000万円のフルローンを契約できるとは考えにくいですが、平均的なサラリーマンでは月24万円もの返済を続けていくことは到底不可能。年収に占める住宅ローンの返済負担率として、「適正な水準」とされるのは20~25%ですから、このローンを「負担感なく」返していけるのは、世帯年収1,200万~1,500万円ほど得ている“勝ち組”だけ、ということになりそうです。
「二馬力ならなんとかなる!」と強気な勝ち組夫婦も、突然どちらかが失職したとしたら、1人の収入で住宅ローンの返済を続けていかなければなりません。潤沢な貯蓄があり、またすぐに復職できるのであれば、なんとか耐えきることもできるでしょう。一方で、失業期間が長期に及んだり貯蓄が十分でなかったりという場合、家計はすぐに“非常事態”ともいうべき状況に陥るでしょう。
また、いくら「超低金利」の住宅ローンが組めるとしても、返済期間が25~35年の長期に及ぶことを忘れてはなりません。未来永劫、この金利水準が続く保証はどこにもないのです。
仮に、上でシミュレーションした「7,000万円・25年ローン」の金利が0.5%上昇して1%になったとすると返済額は月1万5,542円増、1%上昇して1.5%となると月3万1,687円増となります。仮に、返済を初めて10年後に1%金利が上がったと仮定すると、利息額はもともと予定していた約448万円から300万円以上増え、788万8,018円になります。
このように、ローン残債が多ければ多いほど、金利上昇によって受ける影響は大きくなります。
共働きで収入に余裕があるうちに、金利の上昇に備えて「繰り上げ返済」を計画的に行っておくなどして、金利上昇によるリスクを低減しておくことは有効な対策になり得るでしょう。ただ、上にみた就労不能リスクを念頭に置くと、貯蓄を全額返済に充てるような過剰な繰り上げ返済は禁物。手元には常にある程度の現金を残しておける、ゆとりある返済計画を立てることが重要です。