当初13年間の利息総額よりも住宅ローンの減税額のほうが大きくなる?
1972年(昭和47年)から始まった住宅取得時の減税制度は、現在、住宅借入金等特別控除(通称・住宅ローン減税)として内容を変えながら継続されています。2023年11月現在は、住宅ローンの年末残高(上限5,000万円※)に対して0.7%の税額控除を13年間受けられるのはご存じの方も多いでしょう。
※認定長期優良住宅、低炭素建築物の場合
この「0.7%が控除される」という点をもって、「住宅ローンの金利よりも控除率が高いので、13年間は実質マイナス金利」などと説明する住宅営業マンやFPが多いのですが、本当にそうでしょうか。
以下のふたつの条件で試算し確かめてみます(筆者が独自に試算)。
【A:単独債務の場合】
年収700万円
35年返済 元利均等返済 ボーナス加算なし
変動金利 0.4%
借入額 4,500万円
物件:認定長期優良住宅
【B:ペアローンの場合】
夫の年収400万円
妻の年収300万円
35年返済 元利均等返済 ボーナス加算なし
変動金利 0.4%
ペアローンとして夫2,500万円、妻2,000万円
借入総額 4,500万円
物件:認定長期優良住宅
このモデルケースではどちらも世帯年収、物件価格、金利、返済期間は同じです。両方ともに扶養家族がいないという前提で計算してみます。
A単独債務の場合は、
・13年間の減税額 331万2,000円
・13年間の住宅ローンの利息総額 198万5,505円
Bペアローンの場合は、
・13年間の減税額(世帯合計) 319万5,000円
・13年間の住宅ローンの利息総額 198万5,505円
このように、同じ世帯年収、同じ物件価格であれば単独債務でもペアローンでも減税額のほうが上回ります。
自己資金を入れる?フルローンにする?…減税額と利息額の比較
次に、自己資金を1,500万円入れた場合と、フルローンの場合を比較してみます。13年間の減税額と利息総額を試算しました。
【Aフルローンの場合】
年収700万円
35年返済 元利均等返済 ボーナス加算なし
変動金利 0.4%
借入額 4,500万円
物件:認定長期優良住宅
・13年間の減税額 333万1,200円
・13年間の住宅ローンの利息総額 198万5,505円
198万円のコストをかけて、333万円の減税を得たとも言えます。その「利益」は134万5,695円です。
【B自己資金を1,500万円入れた場合】
年収700万円
35年返済元利均等返済ボーナス加算なし
変動金利 0.4%
借入額 3,000万円
物件:認定長期優良住宅
・13年間の減税額 220万6,000円
・13年間の住宅ローンの利息総額 128万7,126円
この場合の「利益」は91万8,874円となります。
AとBの差額は42万6,821円です。1,500万円を自己資金として入れずフルローンにする方が、42万円の「得」があるということになります。逆の見方をすれば、1,500万円を自己資金として入れたら、42万円の「損」をするということも言えます。
これらのことを考えていくと、確かにフルローンの方がメリットが多少なりともあることがわかります。しかし、この42万円の差をどう捉えるかが問題です。住宅購入費用に対してさほど大きな金額ではありません。このわずかな金額のために1,500万円の現金が手元からなくなることで、デメリットはないのでしょうか。
そこで次は、自己資金を入れるデメリットと、フルローンのデメリットとを比較してみます。