生前贈与で父にもらった4,000万円の土地…「義務じゃないから」と〈贈与登記〉をしなかった40代夫婦の悲劇【司法書士が警告】

生前贈与で父にもらった4,000万円の土地…「義務じゃないから」と〈贈与登記〉をしなかった40代夫婦の悲劇【司法書士が警告】
(※写真はイメージです/PIXTA)

不動産の贈与を受けた際、贈与登記が必要となります。しかし、費用がかかるうえ義務ではないこともあり、「必要に迫られてからで良いか」と放置している人は少なくありません。しかし、義務ではないからと登記しないまま放置していると、思わぬトラブルに巻き込まれるリスクがあると、司法書士法人永田町事務所の加陽麻里布氏はいいます。事例を交えて詳しくみていきましょう。

登記をしない→法律上「保護する必要がない」となる

不動産登記の目的は、権利関係を公示することにあります。公示とは、不動産に関する権利や義務を登録して、誰が見てもわかるようにすることです。

 

確かに、登記は義務ではありません。したがって、山田さん夫婦のように、土地の贈与を受けてからそのまま放置をしていても、数年後に登記をすることはできますし、登記をしなくても罰せられることはありません。

 

しかし問題となるのは、第三者が現れた時です。

 

第三者とは、「当事者若しくは包括継承人以外のものであって、登記の欠缺を主張するにつき正当な理由を有するもの」を言います。要するに、山田さんご夫婦が登記を備えなかったことにつき利益を有する者、事例で言うならば『丸山さん』が第三者にあたります。

 

・民法177条

不動産に関する物件の得喪及び変更は、不動産登記法その他の登記に関する法律の定めるところに従いその登記をしなければ、第三者に対抗することができない。

 

この条文は、不動産における物権変動の対抗要件を定めたものです。山田さん夫婦の件で問題となった甲土地は、民法上でいう「二重譲渡」に該当します。要するに、横山さんから、山田さんへの贈与と丸山さんへの売買によって、二重に譲渡されてしまった状態にあるということです。

 

したがって、民法では177条が採用され、登記を先にしたほうが所有権を取得することが認められています。なぜなら、公示をきちんと行ったほうは対抗要件を具備し、登記を行わなかったほうには落ち度があり保護する必要がないと考えられるからです。

 

二重譲渡はほとんどの場合、訴訟など大きな問題に発展してしまいます。したがって、このようなリスクを回避するためにも、所有権移転の際には必ず登記名義人を変更することをお勧めします。

 

※2024年4月1日から相続登記の義務化が開始されます。

 

 

加陽 麻里布

司法書士法人永田町事務所

代表司法書士

 

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