豊かな国であるイメージのある日本ですが、実は子どもの貧困が大きな社会的な問題になっています。先進国であるにもかかわらず、およそ7人に1人の子どもが「貧困」といわれる日本の現実をみていきましょう。
目に見えてひろがる〈日本の経済格差〉…7人に1人の子どもが「貧困」という現実 (※写真はイメージです/PIXTA)

「自己解決」は想像以上に困難…相対的貧困の問題点

「そうはいっても、なんとか衣食住は揃っているのだからそこから頑張って這い上がればいい」という考えの人もいるかもしれません。貧しいところから這い上がった人の話などを見聞きするとそのような考えが出ることもおかしなことではありませんが、ぜひ立ち止まって考えていただきたいことがあります。

 

相対的貧困にある子どもたちは、「家計を支えるために毎日アルバイトをしている」、「高校、大学や専門学校等への進学を経済的理由からあきらめざるを得ない」、「1日で栄養のある食事を学校給食でしか摂取できていない」といった状況が考えられます。

 

これが「貧困の遺伝」です。もちろん貧困になる遺伝子が見つかっている、という生物学的な話ではなく、貧困状態の家庭に生まれ育った人は、生まれながらの周囲の環境等から、貧困から抜け出せない可能性が高いのです。

 

たとえば教育について。高度な教育を子どもに受けさせようとすると当然学費がかかります。

 

十分な所得のある家庭では学校の他に塾に通ったり、苦手な分野があればそれをわかりやすく解説した教材を使ったり、さまざまな方法で学力を伸ばすことができます。

 

ところが相対的貧困の家庭の多くは、高校の進学もままならないのです。いくら才能を持って生まれて勉学に励む素養があっても、高校に行けるかもわからず、大学は多額の借金をしないといけないことが確定しているような状況で、ましてや塾なんかとんでもない、と言われて、高学歴を目指すことは現実的ではありません。

 

そればかりか、子どもたちは周囲の家庭環境との差を目の当たりにして、自己評価や自尊感情が損なわれ、将来への希望がなくなり、学習意欲を失っている場合も多いと報告されています。

 

低学歴や貧困から這い上がるごく一部の例を見て、「貧乏でも学力は関係ない」と言ってしまうことは、才能を開花させる可能性があるのに十分な支援を受けられない子どもを増やし将来の貧困率を上げてしまう行為なのです。