厚生労働省によると、歯科診療所の店舗数は68,088軒でした(2020年時点)。これは、コンビニの店舗数(55,810軒※2023年8月時点)を大きく上回っています。なぜ、日本にはこれほどまでに多くの歯科診療所が存在するのでしょうか。歯科医療の現状について、現役の医師である秋谷進氏が解説します。
【コンビニより多い歯科診療所】9万8,000人の歯科医師が年収810万円も「稼げる」理由 (※写真はイメージです/PIXTA)

歯科医の9割は「歯科診療所」で働いている

厚生労働省が発行する、「令和4年厚生労働白書」によると、2020年(令和2年)12月時点で、107,443人が歯科医師として働いているのですが、その約9割が大きな病院ではなく、歯科診療所で働いています。

 

そして、歯科医師のうち、58,867人(約55%)が歯科診療所の開業医として、32,922人(約31%)が勤務医として働いているのですが、勤務医の多くが歯科診療所のスタッフとして働いています。

 

ここでは、医療機関の受診した際の傷病名ベスト5を表にしました。歯科治療での受診が最も多くなっています。これらの受診の多くが歯科診療所であると考えると、歯科診療所の店舗数の多さにも納得がいくのではないでしょうか。

 

表.医療機関を受診した際の傷病名

コンビニよりも多いのに「儲かる」歯科診療所

しかし、多くの人が歯科クリニックを受診するとしても、採算がとれないと潰れてしまうはずです。それでも、厚生労働白書を見る限り、歯科診療所の数は安定した推移を示しています。
 

これは一重に「歯科診療所はコンビニより多くても十分採算がとれる」という証でしょう。

 

では、実際にどれくらいの収益をあげているのでしょうか。

 

厚生労働省が発行する「第23回医療経済実態調査(医療機関等調査)」の報告によると、歯科診療所の医業収益は年間で「1億0,385万3,000円」でした。

 

年間で1億円超ということは、いち医療機関として「かなり儲けている」といえます。

 

給与費の平均でみても「5,378万6,000円」となっていますから、かなりのものです。もちろん、スタッフに支払う費用なども含まれますが、経営者自身も相当「儲かっている」はずです。

 

また、歯科は意外と幅広いのも特徴。一般的な歯の健康診断に加えて、訪問歯科診療、ホワイトニングといった歯の美容医療など、色々なジャンルの診療を行うこともできます。

 

インプラントなどの自費診療も考えると、歯科は「儲かりやすい科目」といえるでしょう。

 

このように、今後人口減少が見込まれても、歯に関するさまざまなニーズに応えることで、安定した経営を図りやすいのが歯科診療所の強みといえそうです。