(画像はイメージです/PIXTA)

最近では、日本でも投資家デビューする方が増え、さまざまな投資に関心を集めています。投資対象には、株式、債券、FX、不動産、ゴールドなど、さまざまな商品がありますが、高級ワインの資産性に注目した「ワイン投資」も、知る人ぞ知る投資のひとつとして知られています。具体的に見ていきましょう。

ワインが持つ「資産としての価値」とは?

多くの人にとってワインとは飲んで楽しむものですが、ワインにはもうひとつの側面があります。それは「資産」としての価値です。歴史的にみると、高級ワインは古くなればなるほど希少価値が上がります。若いうちに買い、古くなって価値が上がったら売るというのが、高級ワイン投資の前提です。

 

ワイン投資には以下のようないくつかのメリットがあります。

 

ワインという「現物」があることで、価格の変動はあるものの、株式や社債のように企業の倒産などによって資産価値がゼロになることはありません。また、ワインは、歴史的に株式や債券といった金融市場と相関が低く、分散投資効果が期待できます。

時間の経過とともにワイン価格は上昇する傾向に

高級ワインは順次消費されることにより、ヴィンテージのワインの希少性が高まります。

 

ワインは農産物であるブドウを原料として作られます。ブドウは毎年生産されますが、自然の恵みのものであるため、品質は毎年異なります。したがって、ブドウから作られているワインも、ヴィンテージによって味が異なります。つまり、その年に作られたワインは今後2度と同じものを作ることはできないため、希少性が高まります。

 

高級ワインは時間の経過とともに熟成し、質が向上します。結果として、時間の経過とともにワイン価格は上昇する傾向にあります。

 

また、ワインはコモディティのひとつであり、インフレ時には価格がより上昇する傾向があります。

 

[図表]時間の経過におけるワイン価格のイメージ

 

2023年ヴィンテージ…ブドウの出来は?

では、ワインの原材料となるブドウの収穫について、少しばかり見ていきましょう。

 

9月に入り、フランスの全ての主要ワイン生産地でブドウの収穫が始まりました。高級ワイン愛好家が待ちに待った瞬間であり、ワイン生産者にとっては感無量の瞬間です。そして、テロワール(土地)を愛する人々にとっては祝賀の季節の到来です。

 

2023年のブドウの収穫は、2022年と同様、豊作で高品質なものになると予想されています。シャンパーニュの生産者たちは、このヴィンテージの豊潤な味わいとフレッシュなアロマを喜んでいます。なかでもとくに、シャルドネは味わいが豊かです。収穫はかなり早くに開始されましたが、ブドウは十分に熟していました。

 

今年の収穫は、運命ともいえるほど、あらゆる好条件がそろいました。天候が味方し、収穫は理想的なスタートを切ることができました。高級ワインの生産者は自身がテロワールを持っていることが多いのですが、大切なテロワールに、7月の豪雨や8月の熱波といった天候のリスクを回避することができたのです。また、懸念される冷害もなく、夜間の気温は24℃を下回らず、収穫開始の午前7時には温度は26℃を示すこともありました。このようなことはかつてボルドーではみられませんでした。

 

ボルドー、ブルゴーニュ、シャンパーニュのすべての生産者は、霜や雹の被害をほとんど受けず、病害も少なく、穏やかな収穫期の恩恵を受けました。ボルドーでは収穫量がわずかに減少したものの、ブルゴーニュとシャンパーニュでは、収穫者が「これほど大きなブドウの房を見たことがない」と驚嘆するほど、好条件に恵まれました。太陽の光をたっぷり浴びた果実が、2023年のヴィンテージの有望さを予感させます。

チャールズ国王のボルドー訪問

また、2023年の収穫期には、英国王夫妻がボルドーのシャトー・スミス・オー・ラフィットのブドウ畑を訪問したことも話題となりました。9月22日金曜日、チャールズ3世とカミラ王妃は、ボルドー地方のシャトー・スミス・オー・ラフィットへの視察を持って国賓訪問を終えました。

 

英国の君主たちを喜ばせた最後の訪問地でしたが、これはボルドー地方の数あるワイン生産者のなかでも、スコットランド人の元オーナー、ジョージ・スミスの名を冠したこのワイン生産者の名前であったのは偶然ではありません。なによりもまず、このドメーヌ(自身でブドウ栽培・醸造・熟成・ボトル詰めまで行う生産者)は、良質のワインを好むことで知られる国王が高く評価するペサック・レオニャンAOCのグラン・クリュ・クラッセです。

サスティナブルなボルドー・ワイン

しかし、注目したいのはそのワインの傑出した品質だけではありません。シャトー・スミス・オー・ラフィットのブドウ畑を特別なものにしているのは、生物多様性の保全への取り組みだといえます。チャールズ国王自身は有機農法に大きな情熱を持っており、有機農業の印としてボルドーを訪問することを熱望していました。

 

ビオディナミ栽培に転換したこのワイナリーは、長年にわたって最先端の有機農法を実践してきました。有機農法への転換に3年を費やし、これまでの長年の実践を経て、2019年に有機農業のラベルを授与されました。実質的には、ベト病などの害虫からブドウの木を守るために化学物質を投入しないことを意味しています。

 

シャトー・スミス・オー・ラフィットのワイン生産者が好む、主に植物由来の有機堆肥には100%自然栽培というだけでなく、ブドウ畑の生物多様性を高め、保全するという利点もあります。ミツバチの巣箱、菜園、果樹園、そして森までもが、ブドウ畑の自然環境を豊かにしているのです。

 

チャールズ3世の歴史的なボルドー視察と試飲の後、すでに高い名声を得ていたシャトー・スミス・オー・ラフィットのボトルの需要は、史上最高に達しました。

 

 

スタニスラス・ダラモン
カルペ・ヴィヌム・ザ・クラブ共同創設者
伯爵

 

今田 尚孝
カルペ・ヴィヌム・ザ・クラブ
シニア・アドバイザー・ジャパン

 

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