1. 高齢の「おひとりさま」世帯が増えている日本の現状
高齢の「おひとりさま」世帯は確実に増えています。
国立社会保障・人口問題研究所が2018年に公表した「日本の世帯数の将来推計(全国推計)」によれば、日本には2015年の時点で「単独世帯」いわゆる「おひとりさま世帯」が1,842万世帯あり、わが国全体の人口減少にもかかわらず、2040年には、これよりも153万世帯多い1,994万世帯となることが見込まれています。
また、世帯の高齢化も進み、2015年と2040年を比較したときに、世帯主が65歳以上の世帯数が顕著に増加するのは「単独世帯」であり、2015年の1.43倍(625万世帯から896万世帯へ増加)になるとされています。
2. 「7人に1人」が認知症
厚生労働省が2019年(令和元年)に発表した認知症施策推進大綱によれば、2018年(平成30年)には認知症の人の数は500 万人を超え、65歳以上高齢者の約7人に1人が認知症と見込まれているとされています。
このように、認知症は誰でもなる可能性がある病気であり、多くの人にとって身近な問題です。
3. おひとりさまが認知症になったら起こりうるトラブルは?
では、おひとりさまが認知症になった場合に、どのようなトラブルが起こりうるでしょうか。
◆3-1.日常に支障をきたす
認知症の症状は突然重度の症状が発症するのではなく、前兆から始まり、徐々に進行していきます。自分でその兆候に気づくことができれば良いのですが、早期に自覚することが難しく、周囲にいる人、たとえば同居の家族が、本人のおかしな言動から認知症を疑い発見に至ることも少なくありません。
認知症が進行すると、日常生活への大きな支障が出てきます。たとえば、食事をしたこと自体を忘れてしまったり、探し物について誰かが盗んだなどと他人のせいにしたりするといわれています。
したがって、買い物をしたり、食事をしたり、掃除をしたりといった生活に不可欠な行為に事実上の支障が生じてくることになります。
◆3-2.「契約」「法律行為」が単独でできなくなる
また、法律的な面でいうと、自分の行動の意味や内容について理解する能力を「判断能力」といいますが、この判断能力が不十分になると、契約や法律行為ができなくなります。
たとえば、認知症が進行してしまうと、金融機関の窓口で預金の引き出しができなくなってしまいます。また、賃貸借契約や必要なリフォームの契約、売買契約ができなくなってしまいます。一人暮らしをするのが難しくなってきたら、自宅を売却して施設に入ろうと思っていても、認知症が進行してしまうと自宅の売買契約も、施設の入居契約も自分ではできなくなってしまう可能性があるのです。
我々の生活は、日々、さまざまなサービスの提供を受けて成り立っています。普段の生活では意識することはないと思いますが、お店で何かを購入したり、旅行に行ってホテルに泊まったりする、その一つ一つが「契約」の上に成り立っています。
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