老人ホーム選び…高級であれば良いわけではない
国土交通省の資料によると、サービス付き高齢者住宅の入居費用は家賃や共益費、サービス費を合計して平均11万円程度。大都市圏の施設はそれよりも1.5万~2万円ほど高くなっています。厚生労働省の調査によると、遺族年金の平均受給額は月8万円ほど。そこに自身の国民年金を合わせると、夫を亡くした高齢の妻は、平均月14万円ほどの年金を受け取っていると考えられます。最低限のサービスではありますが、年金だけで平均的なサ高住への入居を叶えることができそうです。
そんなサ高住に、昨年、80代の母親が入居したという男性(長男)の投稿。「老人ホームに入った母が、最近、我が家に帰ってきた」といいます。
頑として子どもとの同居も、施設への入居も断ってきた母。しかし80代となり不安を覚えたのか、老人ホームへの入居に興味を示すようになったといいます。
親子で見学を繰り返し、決めたのは、地元でも高級とされる老人ホーム。ラグジュアリーホテルのようなしつらえで、やはりコストはそれなりだったといいます。「ちょっと贅沢ね」という母に対し男性は「自宅を売却した分も予算にいれたら、検討できるのでは」と後押し。実家から遠く離れて暮らす男性。たとえ相続したとしても空き家になるだけと考えての提案だったといいます。
乗り気になった母親は自宅の売却を済ませてから、意中の施設に入居したそう。背伸びして手に入れた老人ホームライフに満足気な母親。しかし、それから半年。母親から「自宅に戻りたい」「退去したい」と電話が鳴るようになり、先日、とうとう退去することに。自宅は売却済みなので、しばらくの間、男性と同居をすることになったのだとか。
母親が老人ホーム入居を後悔した理由。それは入居者との相性だったといいます。地元でも高級とされる施設だけあり、そこに入居する人たちは、地元でも名士といわれていた人たち。そのため「話がまったく合わない」のだとか。周囲には同じような年齢の高齢者がいて、親切なスタッフも常にいるのに、孤独感は日に日に増していったといいます。
「そんなことで、老人ホームを退去⁉」と思ってしまうのも無理はありませんが、老人ホームの退去理由でも「入居者との相性」を上げる人は多いのが実情です。
老人ホーム選びの失敗でよくあるのは、
・決断が早すぎた
・コスト計算が甘かった
・本人の嗜好と合わなかった(食事や入居者など)
など。特に本人の嗜好はどうすることもできず、「これくらい我慢できる」と思っていたものも、それが日常となると耐えられなくなるということはよく聞く話です。老人ホーム選びは、住まい探しと一緒。基準は「実際に長く住めるかどうか」です。背伸びして高級な施設を選んでも、それが入居者にとってベストとは限らないのです。