マイホーム購入者の平均年齢は40歳。そこから始まるローン地獄は平均30年超の長丁場です。大きな負担を感じながらも、なんとか完済した後、「悠々自適の老後生活が待っている」と思いきや、大問題が立ちはだかります。詳しくみていきましょう。
3,700万円・30年ローンでマイホームを建てた40歳サラリーマン…〈返済地獄〉の先に待ち受けていた「悲しい老後」 (※写真はイメージです/PIXTA)

70代で住宅ローンを完済…「悠々自適の老後」を迎えるはずが

仮に前出の国土交通省の調査の平均値通り、3,700万円を借り入れて注文住宅を建てたとしましょう。返済期間は30年、返済方式は元利均等、金利は1%とします。そうすると、利息分は584万2,202円で、月々の支払いは11万9,006円。給与が平均並みだとすると、年収に占める返済負担率は26%ほど。少々負担感を感じるものの、「なんとかなる」といえそうな水準です。

 

ただ心配なのは30年続く返済期間。完済に至るのは70歳であり、年金生活を送りながらローンも返済する期間が5年ほどは続くことになります。さらに、ローンを返し終われば悠々自適の老後生活が待っている……かといえば、そうもいきません。

 

住宅には定期的なメンテナンスが必要になりますし、やっとローンを返し終えた頃、築30年超とになる戸建て住宅に高齢夫婦が暮らすには、リフォームも必要になるためです。

 

前出の国土交通省の調査で住宅のリフォームについての項目をみると、リフォームを実施した世帯の世帯主は60代以上(53.7%)がもっとも多いことがわかります。また世帯の内訳は「高齢者のみ」の割合が約半数に上っており、子が独立し、高齢の夫婦2人の暮らしを見据えてリフォームを行う世帯が多いのでしょう。

 

リフォームを行った世帯に「リフォーム後の高齢者対応設備の有無」を尋ねると、「手すりがある」は25.4%、「段差のない室内」は15.1%、「車いすで通行可能な廊下等」は11.0%、「浴室・トイレの暖房」が21.9%。また「すべてを満たす」が4.0%でした。

 

高齢者向けのリフォーム費用は、手すりの設置のように数万円~数十万円で済む軽微なものから、段差の解消や浴室・トイレの改築など大規模な工事を要し、数百万円の費用がかかるものまで、多岐にわたります。こうした高齢者向けの設備を完備するとなれば、総額1,000万円以上の費用がかかることもあるでしょう。

 

国土交通省『令和2年度民間住宅ローンの実態に関する調査』によると、「融資を行う際に考慮する項目」のうち、99.1%が「完済時年齢」と回答しています。つまり、年齢を重ねれば重ねるほど、融資を得る難易度が高まるため、70代でマイホームを高齢者向けにアップデートするなら、潤沢な自己資金を用意しておく必要があるのです。

 

ローン完済時には、ボロボロのマイホーム。足腰の弱り始めた70代の夫婦がリフォームを検討するも、想定外の見積もりに仰天した上、融資は受けられずバリアフリー化は断念……そんな悲しい老後を迎えないためにも、安定収入のある現役のうちに可能な範囲で繰上返済等を行い、同時に老後に必要になるリフォームを視野に入れた資産形成も進めておきたいところです。