一度心筋梗塞を発症したら、二次予防は生涯続く
心筋梗塞の診断は、心電図、血液検査、心エコーで行います。心筋梗塞であることがわかった場合には、まずは救急室でアスピリンを噛み砕いて咀嚼してもらいます。
アスピリンは昔からよく知られている消炎鎮痛剤ですが、これを摂取すると血小板の凝集が抑制され、血栓の形成を減らすことができ、明らかに予後が良くなります。
経口摂取した場合には30分程度で血中濃度がピークに到達し、60分以内に血小板の凝集を抑制する作用が始まります。死亡率を低下するためにも、この治療法は非常に有効です。
続いて、冠動脈の治療を行います。具体的には「カテーテル治療(冠動脈血行再建術)」と呼ばれ、手首や足の付け根の動脈からカテーテルを心臓まで入れて、詰まった血管を風船やステント(網状の金属)で押し広げることで、心臓への血流を回復させます。遅くとも心筋梗塞を発症してから48時間以内にこの治療を行った方が、明らかに予後が良いことが、研究により明らかになっています※6。
こうして一命を取り留めた後は、再発を避けるべく二次予防が必要で、主に次の薬が用いられます。
- バイアスピリン:血小板の働きを抑えて血液をサラサラにする。抗血小板薬
- スタチン:血液中のLDLコレステロールを低下させ、動脈硬化を予防する
- ACE阻害薬:血管を拡張して血圧を下げ、心臓を保護する
特に、発症4日以内に許容される最大容量のスタチンを投与することが重要。普段コレステロール値が高くない人でも数値を低下させる効果があるため、心筋梗塞を発症した人へのスタンダードな治療薬です。
心筋梗塞のリスクを事前につかむ…唯一の検査法
ここまで読むと、「自分にはどれくらい、心筋梗塞のリスクがあるのだろう?」と不安になる人も多いと思います。そんな人に知っておいていただきたいのが、冠動脈CT検査です。
これは、冠動脈の狭窄を描出する検査。点滴で造影剤を注射しながら呼吸を止め、X線を照射して得られたCT画像をコンピューターで立体的に再構成します。
従来、冠動脈の狭窄や心臓の構造異常を調べるには心臓カテーテル検査をするしかありませんでしたが、冠動脈CT検査の登場により、低侵襲で評価できるようになったのです。
特に、高血圧、高脂血症、糖尿病など、心筋梗塞の危険因子があり、なおかつ、心筋梗塞の家族歴がある人は、40歳ごろを一つの目安に、冠動脈CT検査を受けることをお勧めします。
冠動脈CTを受け、冠動脈病変が全く認められなかった場合、心筋梗塞、狭心症のリスクは非常に低く(0.2%未満)、保証期間は5年までとなります。 一方、冠動脈病変が認められた場合、これらの所見がない場合と比較して、将来の心筋梗塞、狭心症のリスクは5年間で3倍および6倍に増加します。
冠動脈CTを受けるなら装置の確認も
この検査を受ける際にひとつ気をつけたいのは、CT装置の機能です。「64列CT」「320列CT」などの言葉を聞いたことがある人もいるかもしれません。64や320の列数は、「体軸方向の検出器の数を指し、1回転で取得できる画像の枚数」を示しています。
簡単にいうと、数値が大きければ大きいほど一度に撮影できる範囲が広範囲にわたるため、撮影時間が短くなり、高精細の画像を取得できます。長い時間息を止めている必要もなく、被ばく量を抑えることができるうえ、検査の適応範囲や成功率も格段に上昇します。
もし、これから冠動脈CT検査を受けたいという場合には、その医療機関がどんなCT装置を保有しているのか、確認するようにしてください。
心筋梗塞についての知識を深めることで、もしものときに備えておきましょう。
<参照>
※1 https://japan-who.or.jp/factsheets/factsheets_type/the-top-10-causes-of-death-2/
※2 https://www.j-circ.or.jp/jittai_chosa/media/jittai_chosa2019web.pdf
※3 (Circulation 2012:125:e2)
※4 https://www.ncvc.go.jp/coronary2/disease/acute_myocardial/index.html
※5 https://www.j-athero.org/jp/general/6_fh/
※6 (N Engl J Med 2001;344:1879',)
桑原 大志
東京ハートリズムクリニック
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