心筋梗塞の仕組みと初期症状
心筋梗塞が起きる原因は、冠動脈の狭窄です。冠動脈とは心筋を取り巻く血管で、心臓に血液と酸素を送っています。一体どのようにして、この冠動脈に狭窄が起きるのでしょうか。
心筋梗塞を引き起こしてしまう最後の一押しとは?
心筋梗塞が発症する仕組みを見てみましょう。一般に、冠動脈が極端に細くなったり詰まったりすることで発症すると思われていますが、実際、心筋梗塞を起こした人の冠動脈を見ても、明らかな狭窄が見つからないことがほとんどです。
それではなぜ、心筋梗塞が発症するのでしょうか。それは、冠動脈内に動脈硬化性プラーク(コレステロールの塊)が作られているから。脂質の多い食事や運動不足、高血圧、糖尿病などが重なると、血管内にプラークが作られていき、やがてそれが「何らかの原因」によって破綻します。
破綻すると血管内で出血が起きるため、止血しようとして血小板などが集まってきます。すると、血小板が溜まって急速に血の塊(血栓)ができ、血管を塞いでしまいます。こうして心筋梗塞が発症するのです。
つまり、プラークが作られただけでは心筋梗塞は発症せず、「何らかの原因」によって、このプラークが破綻することが心筋梗塞の直接的な原因となるのです。
その何らかの原因が「高血圧」なのです。
血圧が上がると血管には大きな圧力がかかることになり、ストレスを受けます。ちょうどホースの先を指でつまむような感じです。指でつまめば水は勢いよく遠くへ飛びますが、その分、ホースの内側は水圧で傷つきます。これと同じことが血管で起きることで、高血圧によってプラークが破綻し、血栓が作られてしまうのです。
胸、咽頭、肩、背部などに20分以上持続する違和感が出たら心筋梗塞を疑う
心筋梗塞が発症すると、どのような症状が起きるのでしょうか。症状は、「痛み」というよりもむしろ「重苦しい」「締め付けられる」「圧迫される」「絞られる」「焼け付くような感じ」などと表現されることのほうが多いので、「痛みはないから、心筋梗塞ではない」と安易に判断するのは危険です。
また症状は胸部だけでなく、咽頭・頚部、肩、背部、心高部、腕にも認められます。むしろ、これらの部位に症状が限局することさえあるため、胸に症状がないからといって油断するのも禁物です。
私が実際に臨床の場で行っているのは、圧迫や締め付けなど症状のある場所を患者さん自身に指し示してもらいます。すると、心筋梗塞の場合は「手のひらサイズ」であることが少なくありません。一方、「指1本」で限局性に示す場合には、心筋梗塞ではないケースが多いため、何らかの症状が見られたとき、判断の一助とするとよいでしょう。
そのほか、冷汗、吐気、嘔吐、呼吸困難感などの随伴症状があることが多く、高齢者では腹痛のみを訴える場合もあるので注意が必要です。
心筋梗塞の症状の特徴は、こうした症状が少なくとも20分以上持続するということです。もし症状がそれ以上持続する場合には、一刻も早く救急車を呼ぶ、あるいは救急外来を受診しましょう。