マイホームを取得する人の大半が住宅ローンを利用しています。30年超に上ることもある返済期間中には、病気やケガ、あるいは勤め先の業績悪化による突然の「リストラ」など、収入が激減するリスクが潜んでいます。もしローンを滞納し、とくに対処しなかった場合「自己破産」という最悪の結末が待ち受けているかもしれません。詳しくみていきましょう。
30代会社員「住宅ローン月9万円が返せない」…迫りくる〈自己破産〉の危機にどう対処すべきか? (※写真はイメージです/PIXTA)

分譲戸建を購入した大卒会社員世帯…住宅ローン返済負担率は平均「17%台」

総務省『住宅・土地統計調査』によると、日本の持ち家率は最新の2018年調査で61.2%。「賃貸VS持ち家」の論争が鳴りやむことはありませんが、統計をみる限り「持ち家暮らし」が多数派です。

 

相続などで住宅を取得した世帯を除き、自力で購入した人の大半は、住宅ローンを利用しています。そうした世帯の平均返済額は月9万1,874円(総務省『家計調査家計収支編』(2022年平均)より)。下表のとおり、どの年代も平均して8万~10万円ほどの返済を行っているようです。

 

【世帯主の年齢別「ローン返済世帯」の月返済額】

~34歳(平均31.8歳):91,082円

35~39歳(平均37.2歳):90,503円

40~44歳(平均42.0歳):88,668円

45~49歳(平均47.0歳):88,632円

50~54歳(平均51.9歳):91,389円

55~59歳(平均56.8歳):103,777円

60~64歳(平均61.7歳):100,309円

65~69歳(平均66.6歳):84,198円

70歳~(平均72.7歳):82,989円

 

出所:総務省『家計調査家計収支編』(2022年平均)より

 

「月9万円」という返済額は、平均的なサラリーマンにとってどの程度の負担になるのでしょうか。国土交通省の調査によると、分譲戸建住宅を取得した人(一次取得者)の平均年齢は37.5歳。この年代の男性・大卒正社員の給与事情をみてみると、手取りで32万円ほど。残業代やボーナスを含む推定年収630万円に対するローンの返済負担率は17%台です。適正な返済負担率は20~25%とされていますので、無理なく返済していける水準といえるでしょう。

 

【年齢別の大卒サラリーマン(正社員)の平均給与」】

30~34歳:321,700円/5,449,300円

35~39歳:378,500円/6,370,700円

40~44歳:418,400円/6,934,400円

45~49歳:460,600円/7,564,000円

50~54歳:506,900円/8,372,300円

55~59歳:525,700円/8,576,700円

60~64歳:420,600円/6,428,300円

65~69歳:388,600円/5,461,200円

 

出所:厚生労働省『令和4年賃金構造基本統計調査』より

※数値左:月収(所定内給与額)、右:推定年収

住宅ローン利用者100人のうち「返済に問題あり」が3~4人

あくまで平均値をみる限り、毎月安定して給与を受け取っている大卒サラリーマンは、苦労なく住宅ローンを返済できているようです。

 

しかし、住宅金融支援機構が公表したところによると、21年度の「リスク管理債権(元本の回収・利息の受け取りができない可能性が高まっている債権)」の割合は3.17%。住宅ローン利用者100人のうち3~4人程度は、返済が滞るリスクを抱えているということです。

 

ローンの返済ができなくなってしまう代表的な要因は、転職や出向、あるいはリストラ等による収入の減少です。

 

勤め先が大企業の場合、リストラの対象になったとしても通常は上乗せの退職金を受け取れるため、当面の生活には困らず、住宅ローンも問題なく返済を続けていけるでしょう。それに、再就職についての支援を受けられるケースも多いといいます。

 

一方、問題が根深いのは中小企業の場合。急激な業績悪化を背景に予告なしでリストラを実施し、退職金が支給されないというケースもあるでしょう。転職など検討すらしていなかった中小企業サラリーマンが「明日から無職」となれば、次の職に就くまでにはそれなりの時間がかかります。当然その間は収入が途絶えますから、住宅ローンの返済にも大きな不安を抱えることになるはずです。