(※写真はイメージです/PIXTA)

新型コロナウイルスの流行以後、従来のままの運営では集患できないクリニックが増えています。ここでは、医療機関が把握しておくべき新しいWeb集患の方法に加え、院内で患者に寄り添うサービスとしての接遇や対応など、見直すべきポイントを含めて武井智昭氏が解説していきます。本連載は、コスモス薬品Webサイトからの転載記事です。

「オンライン」「オフライン」による集患、それぞれの留意点

新型コロナウイルスの流行に伴い、患者様の受診行動には大きな変化が見られました。その結果、従来の集患方法では十分な患者増加が行えない医療機関も増えています。クリニックの経営・管理においても、インターネットなどの電子的な集患だけでなく、コミュニケーションや接遇を一層重視することで、新患・再診ともに伸ばせるよう、集患方法を見直す必要に迫られています。

 

 

オンラインでの集患対策としては、ホームページの活用はもちろんのこと、SNSの利用や、SEO対策を行うという方法があげられます。

 

※SEO対策...SEOは"Search Engine Optimization"の略で、特定のキーワードで検索された際に、検索結果の上位に自身のホームページを表示させて、流入を増やすための施策のこと。

 

そこには、「偉大な組織にはしっかりとしたビジョンがある」「そのビジョンはいわゆる〈絵に描いた餅〉ではない」「ビジョンをしっかりと体現化できている組織こそ伸びる」といった内容が記述されていました。筆者はそこから、「素晴らしい組織とそうでない組織の違いは、ビジョンの内容ではなく、しっかりと体現化できているかどうかである」と受け取ったのです。

 

具体的には、

 

★どのような診療を実施しているのか

 

★どんな症状に対応しているのか

 

★土休日や夜間の診療も対応できるのか

 

★自費診療(点滴など)も取り扱っているのか

 

これらについて、競合となるクリニックとの差別化を、イラスト等を交えて掲載して注目させます。アピールのためのデザインが重要ですが、初診患者様の誘導には有効です。

 

一方、SNSの投稿の場合には、いわゆる批判の嵐となる「炎上」や個人情報の流出などのリスクもあるため、発信する情報には院長や事務長のひとりよがりにならず、多くのスタッフの目で確認してアイディアを出すことも重要です。

 

続いて、オフラインで対応できる集患対策をあげます。視認性が重要ですから、集客力のある商業施設等に隣接する物件で開業する、看板を目立つようにする(インパクト、通りから見えやすい、クリニックのイメージがわかりやすい)など、視覚に訴える視点が重要です。これに加え、「内科・小児科ともに全年齢OK」「20時、土日も診療」から得意とする治療に関して、セールスポイントを端的にすることにより、注目・関心が寄せられます。

受付でできる医療接遇

医療事務スタッフは、最初に患者様が接する場所ですから、クリニックの「顔」となります。少なくとも受診時には、受付と会計時の2回接するため、こちらの対応が悪ければ、患者様・ご家族の気分を害し、集患につながらなくなってしまいます。

 

重要なポイントは、患者様に対して笑顔で応対する、声かけのトーンを普段よりゆっくり優しく心がけることです。そして、患者様を待たせないよう、できるだけ早く診療録などの入力作業を行い、診察室へつなぐことです。同時に、診察終了後にもできるだけ早く領収書・処方せんを渡し、看護師・医師と連携をして次回以降の受診予定などを間違えないように連携します。とくに会計システムはクリニックにおける重要な業務ですから、院長はスムーズに業務が実施できるような環境整備に努め業務効率の向上をサポートします。

 

また、受診予定の患者様も、自分の事を特別視してくれる、覚えてくれていると思われると再診につながります。このため、朝のミーティング時に、受診予定の患者様とその情報をまずは医療事務スタッフがしっかり把握することが大切です。

 

医師ができる医療接遇

患者様の再診や、知人等へクリニックを勧めるなどの口コミ発生の重要な要となるのが、医師の接遇や雰囲気です。

 

患者様やご家族から「次回もあの先生に診てもらいたい、ほかの人にも勧めたい」と思っていただくためにも、医師自身が注意するべきポイントは多数あります。

 

そのなかでも、あいさつの初対面で「〈雨のところ・暑いところ・寒いところ〉よくお越しいただきました」と、受診に対して敬意を払います。可能であれば、医師が診察室のドアを開けて招き入れると好印象となります。電子カルテが普及している現代では、「パソコンしか見ない医師」と揶揄されることもありますが、患者様のお顔をきちんと拝見し、表情や視点をしっかりと把握しているという姿勢を明示し、患者様の視覚に訴えるようにします。同時に、患者様の訴えを無下にするようなことはせず、まずは肯定してうなずくという、非言語的なコミュニケーションが有効です。

 

仮に診断が深刻であっても、一緒に共感しながらも希望を持たせる話し方をすることも大切です。なにより、患者様は自分のことを気遣ってほしい、自分のことを知ってほしいために受診しています。医師は患者様に「あなたとあなたの家族の主治医」として対応し、訴えの内容や多寡にかかわらず傾聴する姿勢・誠意をみせることです。

 

また、医療のほかにも患者様の生活に関する話題など雑談として多くとりいれることも、親しみやすさを増加します。

 

看護師ができる医療接遇

待ち時間が長くても、人気があって地域から選ばれるクリニックには、患者様・医師をしっかりとつなぐ看護師の存在があります。受付をしたときから、患者様とご家族の体を気遣い、必要に応じて声をかけ、介助をします。たとえば、お体が不自由な方や具合が悪い方には車いすをお持ちしたり、迅速に別室のベッドをご案内したりすることもひとつの方法です。

 

同時に、診察から検査・帰宅までの患者動線の誘導を適切に行い、親切かつ丁寧に対応することも重要です。患者様が不安を少しでも解消して帰宅できるよう、医師に対して質問や疑問点がないか確認し、適切なコミュニケーションを取ることが重要です。

 

クリニックは、スタッフによる「チーム戦」

至極当然ではありますが、医療機関は具合が悪かったり、慢性の病気があったりするほか、反面に健康診断や予防接種などのニーズで受診する場合もあります。

 

おひとりおひとりの患者様を、受診から帰宅までスムーズな動線でご案内し、懇切丁寧なコミュニケーションをとることはとても大切です。

 

医師の言動で嫌気が差す患者様のご家族も多いため、収益の要となる再来院の確率を増加するようなコミュニケーションをスタッフで共有することが重要です。

 

クリニックは個人プレーではなく、スタッフによるチーム戦です。スタッフひとりひとりが自身を患者の立場に置き換えて、心地よい空間になるよう接遇レベルを向上させることこそが、最大の集患ツールとなるのであり、それはまた、古今東西変わることのない「クリニックとしてのあるべき姿」だといえるのです。

 

 

 

武井 智昭

株式会社TTコンサルティング  医師