どのような採用方法をとればスムーズか...4つの方法
クリニック運営の成功を左右する重要な存在として、現場で力を発揮してくれる看護師があげられます。患者様への対応はもちろんですが、クリニックの円滑な運営を実現するためにも、看護師をはじめとするスタッフの人間関係の構築や配慮が求められます。
まず、看護師の採用を行うには、以下の方法があげられます。
①もともと勤めていた病院の看護師を雇用する
開業するクリニックには、もとの勤務先から看護師を誘ってくることが一番良いと思っています。既に一緒に働いた経験があるため、その看護師の優秀さ、お互いの考え方などをよく知っていることが利点です。
ただし、これまでの従業員同士の関係から雇用者・被雇用者の関係に変わることに注意が必要です。この関係性の変化をお互いがしっかりと認識していないと、馴れ合いの関係になってしまう恐れがあるため、注意深く対応する必要があります。
②媒体を活用した採用を行う
一般的な媒体を利用して新たな看護師を募集する方法も有効です。いまでは信じられないかもしれませんが、私が開業した15年前は、ハローワークでも看護師が採用できる時代でした。しかし、看護師は引く手あまたな職業なので、いま同じように採用しようと思ってもむずかしいでしょう。
さらにコロナ明けから全体的に景気が良くなってきている状況で、看護師の給与設定を行うのは非常にむずかしいと思います。
給与以外の部分で選んでもらえるような、クリニックの良さが伝わり、目を引く募集原稿の工夫が必要です。
③段階的な採用を検討する
クリニックを開院した最初の段階では、患者数はまだ多くないため、大量の看護師を雇用する必要はありません。まずはメインとなる看護師を1人雇用し、その人を育成しながら患者数が増えた際に追加の採用を検討する、という段階的なアプローチが効果的です。
黒字転換を早期に実現したいという思いもあるかもしれませんが、最初からすべてを充足させようとせず、計画的な採用を行うことが重要です。
④「女性・男性」両方の視点で採用を行う
人材は、男女両方の視点から採用することが望ましいといえます。とくに院長が男性の場合、面接時はできるだけ女性の看護職専門の方に参加してもらうことが望ましいといえます。とはいえ、開業時にはそれが難しいケースが多いのですが、それでも女性の視点は非常に重要であると筆者は考えています。
例えば、奥様に参加してもらって夫婦で面接を行うなども有効です。逆に、院長が女性の場合は旦那様に参加してもらうなど、女性と男性、両方の視点から面接を行うことをおすすめします。男性の筆者からすると、女性の意見や視点を尊重することで、クリニックの人間関係や環境の配慮に繋がると思っています。
円満なクリニック運営のためには「人間性」「問題解決力」が重要
次に、クリニック内の人間関係の円滑な運営のための留意点について説明します。
①技術力よりも人間性を重視する
前職のキャリアをどこまで気にするかというのは、ひとつのテーマになっていると思います。もちろん、同じ専門科目で働いた経験がある方だと良いですが、そうではない場合も多々あるでしょう。
筆者はこれまで、看護師は職人的なところがある反面、医療事務スタッフとトラブルになるケースを多く見てきました。「看護師のポジションのほうが、医療事務よりも上」とばかりにマウンティングを取り、トラブルになるケースです。
その経験から、採用する看護師には技術的な能力以上に人間性を重視しています。クリニックのスタッフは大半が女性であることが多いため、その点を留意し、お互いのポジションではなく、人間性を尊重できる方を選んでいます。筆者の場合、キャリアはあまり気にしておらず、そこはクリニックに入ってから伸ばしていってもらえれば良いという考え方です。
②ストレスケアと自己解決能力の育成
看護師の仕事は激務であり、ストレスが溜まりやすい環境です。クリニックではスタッフの人数が限られる分、幅広い業務を担うことになりますし、人間関係が濃密さ、モンスターペイシェント(難解な患者)といった要素がストレスを引き起こすことがあります。そのため、院長は看護師のストレスケアを適切に行い、自己解決能力を育成することも大切です。
また、看護師自身で自己ケアや問題解決のスキルを磨くことができる方であれば、とても良いと思います。
以上が、看護師の採用におけるポイントと、円滑なクリニック運営のための留意点です。開業時の採用は慎重に行い、従来の看護師の経験を活かしつつ、適切な人間関係の構築やストレスケアにも注力してください。クリニックの成功に向けて、適切な採用と円満な人間関係の築き方を心掛けることが重要です。
書籍『ビジョナリーカンパニー』にもありましたが、大切なのは「バスに乗せるのはだれか」ということです。目的の行き先に向かうため、ミッションを叶えるため、だれをバスに乗せるか。重要なのはそこなのです。
クリニックの経営者は常に、よりよき人材、より組織にフィットした人材を求め続けることが大切です。自分よりも有能な人材を求める心構えで、常に上へと向かっていくことが望ましいですし、筆者自身も肝に銘じています。
クリニックとしての理念、価値観は、スタッフとなる人材に最初に伝えるべきものであり、そのベクトルがはじめから違う場合は、いかに有能な人材を採用しても、クリニックにとっても、働く本人にとっても、よい結果にはなりません。
梅岡比俊
医療法人 梅華会 理事長