所得があれば税金がかかるのは当然のこと。それは、会社に長期間勤めてきたサラリーマンが受け取る退職金についても同様です。しかし、現役を退いた後、税金について「知らなかった」と驚いてしまう人は意外にも多いようです。詳しくみていきましょう。
今月は、やたらと手取りが少ないぞ…60歳・元大卒サラリーマン、定年退職前後の〈想定外の税負担〉に冷や汗 (※写真はイメージです/PIXTA)

勤続20年超の従業員が受け取る退職金…制度変更によって手取り額が大きく減る可能性も

そんな退職金について、多くの人が勘違いしているのが「税金」。退職金にも所得税や住民税がかかるという事実を知らず、蓋を開けてみたら「あれ、退職金が少ない…」と驚いてしまう人が意外にも多いといいます。

 

また、退職前後の住民税についてもトラブルが目立つといいます。住民税の納付方法には「特別徴収」と「普通徴収」の2種類がありますが、会社員は特別徴収といって、前年の所得によって決まった1年分の住民税が、6月から翌年の5月にかけて毎月の給与天引きの形で徴収されています。

 

退職時期が1~5月の場合、退職月の給与から残りの住民税が「一括徴収」されます。つまり3月末退職なら、4~5月の住民税は3月の給与支給時に一括で差し引かれるということ。そのため「今月はやたらと手取りが少ない…」と驚いてしまう場合も。一方退職時期が6~12月の場合、退職月の翌月以降の住民税は自治体から送られてくる「納付書」を使って自身で納める普通徴収となります。この事実を知らなければ、ここでもまた冷や汗をかくことになるでしょう。

 

そして、現在大きな話題になっているのが退職金にかかる税金(所得税)の見直しについて。退職所得への課税については現状、勤続年数「20年以下」と「20年超」で所得控除額の計算方法が異なり、長く働いた人のほうが税金の負担が軽くなる仕組。ところが、23年6月の「経済財政運営と改革の基本方針2023(骨太の方針)」において、この仕組みの見直しが提案されました。

 

今回の骨太の方針では、「成長分野への労働移動の円滑化」の文脈で、退職所得課税制度の見直しを行う旨が示されました。「長く働いた方がおトク」な制度の見直し、つまり勤続20年超の従業員が受け取る退職金に対する税負担が増すのではないかと考えられています。

 

所得があれば、税金がかかるのは当然のこと。前年度の所得がわかっていれば住民税は計算できますので、給与の支給が終わり、税金が天引きされなくなったときに慌てないよう、あらかじめ納付額を準備しておくことが大切です。

 

また上にみたとおり、制度変更によって退職所得にかかる税金の仕組みが変わる可能性があります。とくに勤続年数が長い人については、想定よりも手取り額が大きく減る事態も起こり得ますので、税制についての情報を常にアップデートしておくことが重要といえるでしょう。