医師を目指すうえでハードルとなる「学費の高さ」。この理由について、一般的には“生徒数が制限されていること”や“大学の運営費が高額となること”などが挙げられます。しかし、それとは別に「本当の理由がある」と、東京西徳洲会病院小児医療センターの秋谷進医師はいいます。それはいったいなんなのか、詳しくみていきましょう。
私立大学医学部の学費が「異常に高い」本当の理由【医師が解説】 (※写真はイメージです/PIXTA)

医学部の学費が高い「一般的な」理由は?

では、なぜ医学部の学費は(特に私大の場合で)こんなに高いのでしょうか?

 

「一般的に」医学部の学費が高い理由として以下の3つのことが言われています。

 

1. 大学病院の運営費用が高額だから

医学部には当然、大学病院がついています。ここでは最先端の医療を行い、高額な薬や医療機器を使用します。また、多くの医師や看護師などを雇用するため、人件費もかかります。

 

実際、2020年度は新型コロナウイルス感染症の影響で、136ある大学病院の医業利益は、計2,619億円の赤字だったと発表されています。そのため、国からのコロナ関連支援金・補助金が2,332億円、自治体独自のコロナ関連支援金・補助金が305億円投入されました。しかし、それでも赤字を埋めることはできませんでした。

 

なお、コロナ前の2019年度でも、136病院合計で499億円の赤字とされています。

 

これらの費用をまかなうため、本来あるべき姿ではないのですが、学費が高くなっている可能性があります。

 

2.学生数が制限されているから

医学部の学生数は、医師の数が増えすぎて医療の質が下がらないように、国が制限を設けています。

 

そのため、大学は学生数を増やして収入を増やすことができません。その分、1人あたりの学費が増えることになります。

 

3.医師を育てる費用が高いから

医学部の教育は「1人の医師を育てるのに5,000万円から1億円もの費用がかかる」とも言われています。

 

医学部の教育には多くの専門的な知識と技術が必要となります。これらを教えるためには、教授や准教授、助教授、助手などといった高度な専門知識を持った人材が必要となります。これらの人材は医師でもあり、当然、専門性を保つために給与も高額です。

 

また、医学部の教育ではさまざまな実験や解剖が行われます。これらの実験や解剖には高価な器具や材料が必要となり、これらの費用も医師を育てるための費用に含まれるのです。

 

さらに、医学部の教育には大学病院で実際の患者と接する臨床実習も含まれます。これには最新の医療設備や研究費用がかかってくるでしょう。

 

このように、一般的には以上の3つが「医学部の学費が高い理由」として挙げられています。

 

しかし、ちょっと考えてみてください。これらの理由は国立でも公立でも私立でも同じはずです。

 

もちろん、国立では国から補助を受けていますが、それにしても、あまりに違い過ぎます。私立の学費が高い理由はもう2つ、非常に重要な理由があるのです。