「数字」と「論理」の限界
株式投資を行う上で、重要な情報となる数字は多岐にわたります。また、それらをもとに今後の株価変動を考える際は、論理的であることが重要です。
しかし投資家は、すべての数字を把握できる訳ではありません。
たとえばEDINETでは過去の有価証券報告書を閲覧することができますが、遡れる年数には限りがあります。また、その会社の経営者の能力や会社が持つ伝統的な文化など、そもそも数値化できない定性的な情報が株価に影響を及ぼすこともあります。
「現在の状況を鑑みれば、株価は今後このように変動していく」と、論理的に予想を立てることはやはり重要ですが、それもまた限られた情報に基づいて投資家自身の頭のなかで考えていることであって、数学の証明のように「誰がどうみても正しい」というレベルには至らないはずです。
見逃している重要な情報があるかもしれませんし、スキャンダルや災害、仕手相場などの予期せぬ出来事が起きるかもしれません。
結局、数値や論理で導き出した予測は「そうなる確率が高い」というレベルに過ぎないのです。
株式投資においても意外と馬鹿にできない「直感」
上にみたように、数字と論理には限界があり、それだけでは100%正しい決断はできません。しかし、売買の決断をしなければ、株式投資などできないというのも事実。
それでは、最終的に売買の決断をする際、投資家は数字と論理以外の何に頼ればよいでしょうか。
それは、「直感」かもしれません。
数字や論理のほうが正確である印象もありますが、直感というものも、馬鹿にしてはいけません。
道に迷って何の手がかりもなければ、最後は直感に従って進む方向を決めるでしょう。「誰と付き合うか」「どこで働くか」「何を食べるか」など、数字や論理で考えていくことには明らかな限界があり、最後は直感で決めていることが多いはずです。
あらゆることを数字や論理で考えて決断しようとすれば、脳には大きな負担がかかります。ですから、余分なエネルギーを消費しないように、それまでに蓄積した知識・経験・自分の性格などに基づき、半ば無意識に決断を促しているもの、それが直感です。
つまり直感は、数字や論理のように意識には上りませんが、やはり脳の働きの一種だともいえるのです。
だから直感が当たりやすい人もいますし、そうでない人もいます。そして株式投資において直感の当たりやすい人というのは、半ば無意識に膨大な情報に注目し、経験を蓄積し、判断力を磨いているのです。