働く目的は人それぞれですが、70歳以上の就労者のうち4割超が「お金を得るために」働いているといいます。働く高齢者に関する統計を紐解くと、「生きがいのため」といったポジティブな理由ではなく、「生きていくため」に働かざるを得ない高齢者が多いという実情がみえてきます。
稼ぎはすべて生活費に消え、今日もまた仕事に…手取り〈月9万円〉70代パートタイマーの「働く以外、選択肢がない」厳しすぎる実情 (※写真はイメージです/PIXTA)

70歳を過ぎても働く理由の4割が「お金のため」

人はなぜ働くのでしょうか。「生活をしていくために=お金を稼ぐため」「自己成長のため」「社会貢献のため」「地位や権力を得るため」など、さまざまな理由が考えられそうですが、内閣府『令和4年度国民生活に関する世論調査』によれば、「働く目的」として、「お金を得るため」と回答した人が63.3%で最多。前回2021年調査と比べ、「お金を得るため」に働くという人の割合は2%ほど上昇しました。

 

働く理由を年齢別にみていくと、50代までは「お金」を挙げる人が7割。それが60代になると6割、70代以上で4割まで下がります。そして、年代が上がるにつれて「社会の一員として務めを果たすため」や「自分の才能や能力を発揮するため」に働くという人が増えます。

 

【年齢別「働く理由」】

18~29歳:79.3%/5.4%/7.6%/6.0%

30~39歳:76.9%/9.0%/8.0%/6.1%

40~49歳:76.1%/5.6%/8.4%/8.8%

50~59歳:75.2%/9.7%/6.5%/7.7%

60~69歳:61.6%/13.4%/6.5%/15.2%

70歳以上:40.8%/15.5%/5.3%/25.3%

 

出所:内閣府『令和4年度国民生活に関する世論調査』より抜粋

※数値左より、「お金を得るために働く」「社会の一員として、務めを果たすために働く」「自分の才能や能力を発揮するために働く」「生きがいをみつけるために働く」

 

上の表をみると、70歳以上の25.3%、実に4人に1人が「生きがいをみつけるために」という理由で働いていることがわかります。一方で、「お金を得るために」とする人が4割に上ることにも注目です。「年金だけでは生活が成り立たない」「趣味にもっとお金を使いたい」等、お金を得ることについての緊急度は人それぞれでしょうが、いずれにしても年金収入だけでは心もとないというシニアが、これだけの割合で存在するというのが実情です。

 

厚生労働省『令和3年度厚生年金保険・国民年金事業の概況』によると、国民年金受給者の平均受取額は月額5万6,479円、厚生年金(第1号)の受取額は月額14万5,665円でした。しかし、あくまでこれは平均値。厚生年金を受け取っている人の中でも、年金受給額(国民年金+厚生年金)5万円未満という人が約2.4%、10万円未満という人が約23%もいます。

 

さらに、同じく厚生労働省の『令和4年度 後期高齢者医療制度被保険者実態調査』によると、「年金収入なし」、つまり無年金の人は全国に50万2,806人。年金がなくとも、株の配当や家賃収入等で暮らしていける人もいるはずですが、それはかなりの少数派でしょう。日本には「働かざるを得ない高齢者」が多くいることが想像できます。