サラリーマンの老後生活を支える「退職金」。受け取れる金額は、大企業なら2,000万円、中小企業なら1,000万円ほどだといいます。そして、この退職金を「賢く運用しよう」と、60代で投資家デビューを果たす人は少なくないようです。今回は、1,200万円の退職金を受け取った元・中小企業部長の、運用の失敗事例をみていきます。
銀行員「毎月3万円ほどの分配金が出ます」…64歳・元中小企業部長が大興奮し、〈退職金1,200万円〉をつぎ込んだ「投資信託」とは? (※写真はイメージです/PIXTA)

5人に1人が60代で「投資家デビュー」を果たしている

サラリーマンの多くは、60歳で「定年」を迎えます。このタイミングで、今後も働き続けるか、引退するかの選択を迫られることになりますが、いずれにしても、現役時代に比べて収入が減少することは明らかです。

 

そんな定年後の生活を支えるのが、「退職金」。一般社団法人日本経済団体連合会の調査によると、大企業勤務のサラリーマンは大学卒・総合職・60歳定年の場合で平均2,440.1万円。高卒・総合職・60歳定年の場合は平均2,120.9万円の退職金を受け取っているといいます。一方、中小企業の場合は大卒の定年退職で1,091.8万円(東京都産業労働局『中小企業の賃金・退職金事情(令和4年版)』より)。中小企業の場合、受け取れる退職金額は大企業の約半分というのが相場です。

 

退職金の支給方法はさまざまですが、大きく分ければ以下の4つ。

 

①退職一時金制度
従業員の退職時に一括で退職金を支給する

②確定給付企業年金制度
従業員の退職後、一定期間に渡って退職金(年金)を支給する

③企業型確定拠出年金制度
企業が積み立てた掛金を従業員が年金資金として運用する

④中小企業退職金共済
従業員が退職後、積み立てた退職金が共済機構から支払われる

 

多くの人が、「退職金」と聞けば、①の一時金を想像するのではないでしょうか。大企業出身者であれば2,000万円、中小企業出身者で1,000万円にもなる退職金。一度に銀行口座に振り込まれる金額としては、これまでで最大の額という人がほとんどでしょう。

 

一般社団法人 投資信託協会が行った『60歳代以上の投資信託等に関するアンケート調査(2021年(令和3年))』によれば、「初めて投資をした年齢」として、17.8%の人が「60代」と回答。また、同調査では「退職金の使い道」として、「資産運用のための金融商品の購入」が5番目にランクインしています。

 

60歳以降、年金受給が始まるまでは定期収入がゼロになるか、あるいは働き続ける選択をした人であっても現役時代に比べて給与が減るケースがほとんどですから、老後生活への不安から、このタイミングで「投資家デビュー」に踏み切る人が少なくないようです。