「生きがいのため」ではなく「生きていくため」に働かざるを得ない高齢者
総務省によると、2021年における65歳以上の就業者数は前年比6万人増の909万人。高齢者人口の増加に伴い、就業者数も18年連続で増えています。高齢就業者のうち57.6%の人が「役員を除く雇用者」として勤務しており、その内訳をみると、「パート・アルバイト」が最多の52.2%。2番目以降には、「正規の職員・従業員」(24.1%)、「契約社員」(9.5%)、「嘱託」(7.0%)が続きます。
65歳以降、会社役員や正社員などの好待遇で就労できる人は少数派です。2013年に「高年齢者雇用安定法」が制定されたことで、定年後も仕事を続けやすい環境が整備されつつあるとはいえ、それまで勤めてきた会社で働き続けるにしても、雇用形態が「契約社員」や「嘱託社員」となるケースが大半であり、それが叶わない場合はパートやアルバイトという働き方を選択する人が多いということがわかります。
ところで、パート・アルバイトとして働いている高齢者は、どれほどの収入を得ているのでしょうか。
厚生労働省『令和4年賃金構造基本統計調査』をみると、60代後半・短時間労働者の平均月給は推定11万8,409円(1日あたり所定内実労働時間数5.2時間、実労働日数16.3日)、70代の場合は推定10万7,527円(同4.9時間、同16.1 日)で、手取りは約8万~9万円。「その他特別給与」など手当を合わせても、年収は約132万~146万円になります。
貯蓄が十分でなく、受け取れる年金もゼロか極端に少ないという場合、8万~9円の手取り収入では、生活を維持していくだけで精いっぱいだと思われます。とても貯蓄などできず、仕事を「辞めたくても辞められない」という状況に追い込まれている人は少なくないといえるでしょう。
今日では、60代後半~70代以上といっても元気な人が多く、「それまでの人生経験や仕事のスキルを社会に還元するために」とか「若々しくいるために」などのポジティブな理由で働き続けている高齢者も目立ちます。
しかし、上に挙げた「無年金の高齢者が50万人超」「お金のために働く高齢者が4割超」という統計をみると、「生きがいのため」ではなく「生きていくため」に働かざるを得ず、給与はすべて「生活費」に消え、今日もまた働きに出る高齢者が溢れている、というのが日本の実情といえそうです。