「夢のマイホーム」を取得する人の半数以上が利用する住宅ローン。いまは返済に余裕があったとしても、突然リストラに見舞われ、収入が途絶えたとしたら…。やむを得ず、ローンを延滞することになったら、どう対処すればいいのでしょうか。詳しくみていきます。
“余裕”の資金計画でマイホーム購入の40代・会社員…「まさか」の事態で〈月8万8,000円〉の住宅ローン延滞、現実味を帯びる「自己破産」 (※写真はイメージです/PIXTA)

大卒サラリーマン世帯の住宅ローン返済負担率は平均「15%台」

マイホームの取得にあたっては、中古マンションを購入する人の52.5%、新築の注文住宅を建てる人の83.2%が住宅ローンを利用しています(国土交通省『令和4年度住宅市場動向調査』より)。

 

そして、総務省『家計調査家計収支編』(2022年平均)によると、住宅ローンを利用する世帯の平均返済額は9万1,874円。下表をみると、どの年代も平均して8万~10万円ほどの返済を行っていることがわかります。

 

【世帯主の年齢別「ローン返済世帯」の月返済額】

~34歳(平均31.8歳):91,082円

35~39歳(平均37.2歳):90,503円

40~44歳(平均42.0歳):88,668円

45~49歳(平均47.0歳):88,632円

50~54歳(平均51.9歳):91,389円

55~59歳(平均56.8歳):103,777円

60~64歳(平均61.7歳):100,309円

65~69歳(平均66.6歳):84,198円

70歳~(平均72.7歳):82,989円

 

出所:総務省『家計調査家計収支編』(2022年平均)より

 

たとえば、男性・大卒会社員(正社員)の平均給与は以下の通り。たとえば42歳のサラリーマン世帯であれば手取りは35万円ほど。ローン返済額を引いた26万円ほどで平均4人の家族の生活を養うことになります。年収に対するローン返済の比率である返済負担率は15%台。適正な返済負担率は20~25%とされていますので、無理なく返済していける水準です。

 

【年齢別のサラリーマン(正社員)の平均給与」】

30~34歳:321,700円/5,449,300円

35~39歳:378,500円/6,370,700円

40~44歳:418,400円/6,934,400円

45~49歳:460,600円/7,564,000円

50~54歳:506,900円/8,372,300円

55~59歳:525,700円/8,576,700円

60~64歳:420,600円/6,428,300円

65~69歳:388,600円/5,461,200円

 

出所:厚生労働省『令和4年賃金構造基本統計調査』より

※数値左:月収(所定内給与額)、右:推定年収

住宅ローン利用者100人のち3~4人は返済に問題あり

あくまで平均値をみると、正社員として毎月安定して給与を受け取っている限り、ローンの返済に苦労している様子は見て取れません。

 

しかし、住宅金融支援機構の調査によると、21年度には「元本の回収・利息の受け取りができない可能性が高まっている債権」を意味するリスク管理債権の割合は3.17%。つまり、住宅ローンを利用している100人のうち3~4人程度が、返済に問題を抱えており、「破産更生債権及びこれらに準ずる債権」「危険債権」「三月以上延滞債権」の合計は3,140億円に上っています。

 

ローン返済が苦しくなる理由は「定年を迎えた」「共働き世帯が片働きになった」「子どもの教育費が増加した」などとさまざまですが、代表的な要因が、転職や出向、あるいはリストラ等による世帯収入の減少です。

 

東京商工リサーチによると、23年1-5月に早期・希望退職募集を開示した上場企業は20社。コロナ禍で大きな影響を受けた観光や運送、外食産業におけるリストラはいったん落ち着いたようですが、情報通信業・製造業で早期・希望退職の募集が目立ち、募集人数がわかっている15社で1,217人が対象になったといいます。

 

大企業の場合、リストラ対象になったとしても、通常は退職金が上乗せで支払われるため、「自宅を売って生活費を捻出しなければ…」という最悪の事態は避けられるかもしれません。しかし中小企業の場合はどうでしょう。リストラの背景には急激な業績悪化が潜んでいることが多く、いきなりクビを宣告される「まさか」の事態に陥ることも。

 

所属していた会社から再就職の支援等を受けられず、無収入の期間が続くことになると、いよいよ住宅ローン破産が現実味を帯びてきます。