日本における「単独親権」という考え方の根深さ
日本で子どもを連れて出た親が、子どもの監護の権利を持ち、いずれは親権をもつ、という流れが成り立つのは、やはり「いずれ単独の親権になるのだから」というバックボーンが根強いのかもしれません。逆にそれがないとき、どちらかの親を勝たせるわけではないというときは、子どもを連れて出ることの正当性もやはりそれだけ下がってしまうのでしょう。
裁判所の決定詳細を見なければ本当の筋書きはわかりませんが、筆者が考えついたのは以上のようなことでした。日本における共同親権の議論にも、今回東京の家庭裁判所が思い切った決定をしたことで、さらに火がつくかもしれない、と考えました。
(おそらく家事第3部という渉外部門の決定でしょう。筆者が2年間同部で非常勤裁判官を勤めていたところで、もし在籍していたら詳しい議論を伝え聞けたのかもしれません)
元パートナーの「発言」からみる事案
今回、わざわざお父さんの江さんが来日して会見し、「早く子どもに会いたい」「早く(長男を)お姉ちゃん(長女)に会わせてあげたい」と涙ながらに発言されたのは、印象的でした。
なお、台湾がハーグ条約加盟でないこともあり、今回の決定でただちに子どもが台湾に戻されるわけではないようです。多少戦略的なところもあるのかもしれないですが、長い文章、長い発言よりも、端的な発言が心情や真理を表現して人の心を打つことがありますね。