長寿化が進むなか、介護を必要とする人が増えています。一方で、介護をする人も増えているといえるでしょう。現役世代なら仕事と介護の両立は大きな課題であり、子どもから施設への入所を勧めるケースもあるでしょう。しかし、後に大きな後悔に変わることも多いようです。みていきましょう。
悔やんでいます…年金14万円・80代の高齢の母に「老人ホーム入居」を勧めた50代娘の無念 (※写真はイメージです/PIXTA)

親に施設への入所を勧める子…「いいわよ」と快諾したその裏で

少しでも介護に携わったことがある人であれば、家族とはいえ、どれほど介護が肉体的にも精神的にも重労働か、知っているでしょう。

 

――もう、限界

 

そう悲鳴を上げる人も少なくありません。また親を子が介護する場合、問題になるのが介護と仕事との両立。80代で親が要介護となった場合、子は50~60代。昨今は70歳くらいまで働く人も多く、その間、親の介護と仕事とのバランスは大きな課題です。

 

アクサ生命が2019年に行った『介護に関する親と子の意識調査』によると、親の介護期間と自身の就労期間が重なることが予想される両立期間は、平均「12~14年」。10年以上の長期間になるようです。

 

在宅介護は難しいから、施設に入所を……そう検討するケースも多いでしょうが、そこで気になるのは費用。“親のお金”だけで賄うことができるのか、それとも子も負担しないといけないのか、ということです。

 

厚生労働省の資料によると、サービス付き高齢者向け住宅等の平均費用は月17.3万円。一方で、厚生年金受給者の平均受給額は月14万円、手取りだと12万円ほどになります。つまり月5万円、年間では60万円ほど年金では賄えない不足分が生じます。仮に10年間の入居を見込むなら600万円。高齢者の平均的な貯蓄額から考えると、基本的に親のお金だけで老人ホーム入居は叶うでしょう。

 

それよりも問題なのは、実は親子の「考え方のズレ」。前出の調査では親の介護経験がない40~50代の子世代に、親の介護場所の希望を聞いていますが、そこで最も多かったのが「施設」で38.4%。一方で60~70代の親世代に、自身の介護場所の希望を聞いたところ、最も多かったのは「自身の自宅」で36.4%でした。

 

さらに自身が要介護状態になったときに「自宅での介護を望む」60~70 代の親世代に、子どもから老人ホームへの入所を提案されたらどう感じるか聞いたところ、「自宅や家族と離れるのは寂しい」が83.2%、「迷惑をかけてしまうので仕方がない」が82.6%でした。

 

50代の娘:お母さん、老人ホームへの入所ってどうかしら

80代の母:それもいいかもしれないね……

 

そんな母と娘のやり取りのなかには、親子の微妙なすれ違いが生じている可能性が高いのです。

 

思いに反して親に老人ホームを勧め、のちのち強い後悔に襲われた、という子の話はよく耳にするもの。快く提案を受け入れてくれたと思ったのに……。そんな思いです。しかし介護負担で共倒れというのも悲劇でしかありません。よく話し合い、微妙なすれ違いをきちんと解消することが、介護する側も介護される側も幸せになれる、唯一の方法です。