慢性化した腰痛は「メンタルアプローチ」が有効かも
どれだけ治療を続けても腰痛が治らないのは、本人にとっては相当な苦痛のはずです。治療にかかる時間も費用もかさみますし、QOLも大きく低下してしまいます。その場合には、整形外科だけではなく、別方面からのアプローチを加えてみるといいかもしれません。
上記にあげたように、パーソナリティなど性格的な要因が治療に影響を与えていることが予想される場合には、整形外科単独で効果を出すことは難しいので、心療内科やペインクリニック、薬剤師、ソーシャルワーカーなどと協働するケースが望ましいとされています。
心療内科による治療で心理的な問題をコントロールしつつ、整形外科でのリハビリに認知行動療法を取り入れ、少しずつ改善のステップを踏むのが理想的です。
リハビリでは、「いまの痛み」のみに目を向けず、「以前の自分」と「いまの自分」を比較してみて、「どれくらい痛みが改善されたか」に着目します。比較を容易にするために、ご自身で痛みや症状をノートに記録するのもいいでしょう。
また、治療前に「できないこと」を列記しておき、1ヵ月後や2ヵ月後などに「どれくらいできることが増えたか」を書き出すことで、客観的に進歩をたしかめることができます。
「SDSテスト」で“治りにくさ”を客観的に判断
2021年発刊の慢性疼痛診療ガイドラインでも、「認知行動療法および患者教育を組み合わせた運動療法が強く推奨される」と記されています。
その際、しばしば用いられるのが「自己評価式抑うつ尺度(SDS:Self-rating Depression Scale)」※3です。これはそもそも心療内科で用いられるテストであり、患者に20の質問に答えてもらい、合計得点を「正常」「神経症」「うつ病」の3群に分けて評価することでうつ状態の程度を簡便に把握します。
もし、なかなか治らない腰痛に悩まされており、上記のSDSの合計得点が「神経症」あるいは「うつ病」に当てはまる場合には、かかりつけの整形外科の先生に心療内科を紹介してもらうといいのではないかと思います。
腰痛には「心因」も大きく影響する
腰痛の発症にはストレスをはじめ心因的な要素も多く関わっており、認知行動療法のメソッドを利用し、自分の「考え方」を修正することで症状が緩和されるケースも少なくありません。
興味がある人は、まずかかりつけ医に相談してみましょう。
<参考>
※1 東邦大学メディカルレポート「さまざまな腰痛とその治療について~痛みが慢性化する前に適切な治療を~」
(https://www.toho-u.ac.jp/press/2018_index/20181031-930.html)
※2 日本腰痛学会雑誌Vol.10-1 Nov.2004
(https://www.jslsd.jp/img/journal/pdf/vol10.pdf)
※3 大谷明、佐藤学「SDS(Zungの自己評価式抑うつ尺度)」の質問文の表現に関連した応答バイアスの検証
(https://www.jstage.jst.go.jp/article/jbhmk1974/26/1/26_1_34/_pdf)
越宗 幸一郎
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