心筋梗塞で搬送の70代男性“もう手遅れ”だが…「私は助かりますか?」患者の問いに、医師が返した「ひと言」【医師の実体験】

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心筋梗塞で搬送の70代男性“もう手遅れ”だが…「私は助かりますか?」患者の問いに、医師が返した「ひと言」【医師の実体験】
(※写真はイメージです/PIXTA)

心臓に原因のある突然死のなかでもっとも多いのが、心筋梗塞から心室細動を引き起こし、命を落とすというケースです。救命の可能性もあるものの、1分1秒を争う治療となり、現実には命を落とす症例も少なくないと、循環器専門医である東京ハートリズムクリニックの桑原大志院長はいいます。桑原氏の実体験から、緊急事態のときに必要な医師と患者「それぞれの覚悟」をみていきましょう。

「救命」か「幸せな最期」か…生死の境に向き合う医師の苦悶

翌日、筆者は上司に「どうして緊急招集をかけなかったのだ!」と叱責されました。もちろんこうなることは予想していましたが、筆者はなにも返事をすることができませんでした。

 

昨晩、筆者はお坊さんの幸せそうな最期を目の当たりにし、「もちろん救命は医師にとって第一に優先すべき職務だが、決してそれだけが医師の仕事ではない。患者さんの置かれている状況とご家族の思い、すべてを考慮したうえで、できるだけ幸せな最期を迎えることができるようにするのも医師の役割だ」と感じたからです。

 

とはいえ、あれからかなりの年月が流れましたが、「もしあのとき緊急招集をかけていたら」「あの晩、筆者がとった行動は正しかったのか、間違っていたのか」……いまでもこの問いは自分のなかに存在し続けています。

 

心筋梗塞を起こした際、冠動脈形成が間に合わないと、患者さんは医師による手技の最中やカテーテル室に運ばれる途中で心室細動を発症します。医師は心臓マッサージや電気ショックでなんとか蘇生を目指しますが、残念ながら亡くなってしまう方も少なくありません。

 

また実際のところ、高齢の方への心臓マッサージはかなり惨憺たる状況になるケースもあります。胸骨圧迫により肋骨が「ボキッ」「ボキッ」と鈍い音を立てながら折れることも少なくありませんが、それでも救命を優先するため、医師は力いっぱい圧迫を続けなければなりません。

 

そんな状況に、筆者だけでなく多くの救急医が「なんとか助けなければ」という思いと「この状況であればご家族が『もう結構です』とおっしゃるかもしれない」という思いの狭間で、なおも必死の思いで心臓マッサージを続けていることは間違いないでしょう。

 

もし、患者さん自身があらかじめ人生の最期をどう迎えたいのかということに向き合い、ご家族にもその思いを伝え、話し合っていれば、このような緊急事態に直面した際の判断も変わってくるのかもしれません。

 

筆者はこの経験から、たとえ命が危険な状況であっても、家族で穏やかなひとときを過ごしたいという患者さん本人の願いを叶えることもできるのだと知りました。それこそ、すべての人間が等しく権利として持っている“尊厳ある死”のあり方ではないかと感じました。

 

もちろん、患者さんの年齢や状況によっては、「どれだけ惨憺たる状態でもいいから、なんとか命を救ってほしい」ということもあります。どの対応がふさわしいのかは、1人ひとり異なります。

 

だからこそ、筆者は思うのです。この記事を読んでいるあなた自身、もしくはあなたのご家族が、万が一心停止の状態になったとき、救命措置をどうするか? 尊い命の最期を、どのように迎えたいのか?

 

……もしかしたら、明日このような場面に立たされることもあるかもしれません。健康なときにこそぜひご家族で話し合っていただきたいと、切に願います。

 

<参照>

※1 厚生労働省「令和2年(2020)人口動態統計月報年計(概数)の概況」
https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/jinkou/geppo/nengai20/dl/gaikyouR2.pdf

※2 日本AED財団「心臓突然死の現状」
(https://aed-zaidan.jp/knowledge/index.html)

 

 

桑原 大志

東京ハートリズムクリニック

 

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