長生きすることは幸せなことと、誰もが思っているでしょうが、日本の高齢者からは「長生きするだけしんどい」という声も聞こえてきます。老後、生きていく苦労をみていきましょう。
年金12万円・76歳男性「地獄です。」週2日のゴミ拾いで月4万円「生きているのもしんどい」 (写真はイメージです/PIXTA)

年金生活者の9割が「年金だけでは生活できない」が現実

金融広報中央委員会『家計の金融行動に関する世論調査[単身世帯調査](令和4年)』で「年金についての考え方」を聞いたところ、「年金だけで生活できる」と思っている人はわずか7.6%。すでに年金世代に突入している70代ですら8.8%。生活水準は人それぞれですが、実際に年金世代の9割以上が「年金だけで生活はできない状態にある」といえるでしょう。

 

またその70代で「ゆとりはないが日常生活費程度はまかなえる」と回答したのが50.6%。「日常生活費程度もまかなうのが難しい」が40.6%でした。多かれ少なかれ、貯蓄の取り崩しがなくては老後の生活は成り立たない、というのが現状のようです。

 

さらに現役世代についていえば、いまの年金水準がこれからも続くというのは、ほぼありえません。20年後には、今の年金水準から2割減となるのが確実視されています。わたしたちは「今よりも年金をあてにすることはできない」ということを前提に備える必要があるのです。では年金2割減を見据えた、主な対策をみていきましょう。

 

年金2割減を見据えた事前対策①私的年金制度の活用

たとえば自営業・フリーランスであれば、月々の国民年金保険料に上乗せして国民年金基金に加入。選択する給付型や加入の口数、加入時の年齢、性別で月額掛金は決まり、上限の月6.8万円を20歳から60歳まで払い続ければ、年20万円を超える年金が上乗せできます。さらに月400円の付加保険料を納めれば、「200円×付加保険料を納めた月数」だけ年金を増やすこともできます。

 

会社員であれば厚生年金に加え、確定給付企業年金制度、確定拠出年金制度、厚生年金基金制度などに加入すれば年金額を増やすことができます。ちなみに厚生年金基金の平均受取額は年50万円程度。まずは勤務先にどのような制度があるか確認しましょう。

 

年金2割減を見据えた事前対策②iDeCo

個人向けの確定拠出年金制度であるiDeCo。加入は任意で、20歳以上60歳未満のすべての人が加入できます。発生した利益は非課税で、保険料は申告によって税金の還付が受けられます。運用益を手にできるのは60歳以降で、60歳から支給を受けるには加入期間10年以上が必要です。またもらえる年金額は運用成果によります。元本割れのリスクもあることを十分に理解し、自己責任で行われなければなりません。

 

年金2割減を見据えた事前対策③NISA

2024年から新しいNISA制度がスタートします。成長投資枠とつみたて投資枠があり、非課税期間は無制限。年金投資上限額は、成長投資枠が240万円、後者がつみたて投資枠120万円、非課税保有限度額は1,800万円で、そのうち成長投資枠の上限額は1,200万円になります。

 

年金2割減を見据えた事前対策④年金の繰り下げ

現在、多くの企業で60歳を定年年齢としていますが、本当に60歳で現役引退を選択している人は2~3割程度といわれ、「定年後も働く」がいまやスタンダード。原則、年金受給がスタートする65歳以降も働く人も珍しくありません。

 

もし、年金を受け取らなくても生活できるのであれば、「年金の繰り下げ制度」を利用。65歳から受け取れる年金を1ヵ月遅らせるごとに0.7%増額。75歳まで繰り下げれば増額率は84%となり、大きく年金受取額を増やすことができます。また国民年金と厚生年金、どちらかは受け取り、どちらかは繰り下げる、ということも可能です。