限界を迎える介護者たちを救う〈介護サービス〉だが
2020年、同居している主な介護者が1日で介護に要している時間をみていくと、半数が「必要なときに手をかす程度」である一方で、「ほとんど終日」も19.3%となっています。介護度が上がるに従い、肉体的にも精神的にもきつくなっていく介護。特に「老老介護」の現場は悲惨を極めることも。
たとえば、80代の母を介護する、60代の一人娘。車椅子に移動するのも重労働、食事をさせるのも重労働、着替えをさせるのも重労働、最近は認知症も進行してきて……「もう無理!」と限界を超えてしまうケースも珍しくありません。
そのようなとき、頼りになるのが介護サービス。介護をする人の中には「家族のことなのに、人の手を煩わせるなんて」とサービスの利用を躊躇するケースも多いといいます。しかし要介護者と介護者、共倒れになってしまってはいけません。もちろんサービスを利用するのに無料というわけにはいきませんが、対象となるサービスであれば負担は1~3割。多くの人が利用しやすいものだといえるでしょう。
ようやく決心し、介護サービスを利用することに。家のチャイムが鳴り、待ちに待った訪問介護、初日。そこで「えっ⁉」と驚くようなことも多いとか。
――わたしよりも年上の方⁉
てっきり、体力にも自信のある若い人が来るかと思ったら、訪ねてきたのは60代か70代かと思われる介護ヘルパー。「こんな年で……大丈夫かしら」と、少々心配に。
公益財団法人介護労働安定センター『令和4年度介護労働実態調査』によると、介護労働者の平均年齢は居宅介護支援が最も高く53.0歳、訪問系は48.6歳、居住系は48.0 歳、施設系(通所型)は46.8歳、施設系(入所型)は44.3歳。介護労働者全体の16.5%は60歳以上で「60~65歳」が8.8%、「65~70歳未満」が5.0%、「70歳以上」が2.7%。また訪問系では「70歳以上」が3.1%、居宅介護支援では「70歳以上」が4.4%を占めます。
このように、介護サービスの現場では、高齢者も重要な担い手であり、その割合は増加傾向にあります。高齢化、長寿化に伴い、「健康なうちは働き続ける」がトレンドになりつつあるなか、介護業界は受け皿になっているのです。
一方で「若い人は介護職になりたがらない」という一面も。同調査によると、介護職員の月収は「20万~25万円未満」が最も多く26.0%、続いて「15万~20万円未満」が19.7%、平均月収は 21万4,501円となっています。また職種別に平均月収をみていくと、「無期雇用職員」は22万4,533円、「訪問介護員」は18万8,435円、「サービス提供責任者」は24万3,312円、「介護職員」は20万5,898円、「介護支援専門員」は24万5,070円。
厚生労働省によると、全労働者(男女計、学歴計)の平均月収(所定内給与)は31.18万円。それと比べても、介護職は低収入であることがわかります。その分、“楽な仕事”であればいいのですが、想像の通り、介護職は気力も体力も必要。「割に合わない」というイメージが強いでしょう。
今後、ますます介護サービスのニーズは高まっていきます。しかし若い人が介護職を敬遠していては、高まる需要に応えられない可能性もあるでしょう。現在、介護負担で限界を迎えようとしている人たち。このような人たちを救うためにも、業界全体の処遇改善が求められます。