がんは罹患するとお金がかかる病気であるため、がん保険への加入を検討している人も少なくないでしょう。しかし、そのような民間保険を考える前に、まずはがんでの入院や治療の際に使える公的保障について知っておくべきと、株式会社ライフヴィジョン代表取締役のCFP谷藤淳一氏はいいます。なかには多額のキャッシュバックを受けられるケースも……。本記事では、宮沢里美さん(仮名・40歳)の事例とともに、知らないと損する高額療養費制度について解説します。
年収500万円の40歳美容師「肺がん医療費・70万円」も、1年11ヵ月後市役所へ駆け込むと…まさかの「55万円」キャッシュバックで大歓喜【CFPが解説】 (※写真はイメージです/PIXTA)

知らないと払い損!高額療養費制度によるキャッシュバック

宮沢さんのがん入院とその費用負担、さらにその入院時期について確認したあと、突然「市役所へ行ってください」といってきたFP。このFPはなにを気にしたのでしょうか。 宮沢さんは翌日いわれたとおり入院時の資料を手に市役所へ行き、国民健康保険の窓口で手続きを行いました。

 

FPがいうには退院時に支払った金額は自己負担限度額を超えているので、「高額療養費」の手続きをすることで支払った医療費の大部分がキャッシュバックされるということ。

 

いままでそんな話は聞いたこともなく半信半疑ではありましたが、お金のプロのFPがいうのだから間違いはないはずと手続きし、「5万円くらい戻ってくれば臨時収入でうれしいな」などと考えていました。

 

このあと宮沢さんは振り込まれた金額を見て驚くわけなのですが、この高額療養費という制度は入院・手術というケースにおいては、ほぼ必ず手続きをするべき制度です。そして日本でがんを始めとした医療費への備えを考える場合、必ず知っておくべき制度になります。以下で宮沢さんがキャッシュバックを受けた金額、そしていくつかの注意点を確認していきたいと思います。

 

期限ギリギリでまさかの「55万円キャッシュバック」

宮沢さんは市役所で手続きしている際に市役所の職員から、手続きがあと1週間遅かったら期限切れになっていた旨を伝えられました。ただそこまで期待していたわけでもないので、いわれても特になにか感じることもなく淡々と手続きを済ませ帰宅しました。

 

ところが後日通帳を記帳しに行って、まさかの入金額にビックリ。なんと約55万円もの金額が振り込まれていたのです。宮沢さんは、喜びのあまり小躍りしてしまいました。これがあと1週間遅かったら期限切れ、ちょっとした会話だけで急いで高額療養費の手続きを勧めてくれたFPに感謝感激です。

 

元気な人ほど知らない「高額療養費制度」

この高額療養費ですが、医療にかかる機会が少ない人ほど知らない傾向にあります。私は過去に1万回以上の保険相談会に携わってきました。そして医療保険、がん保険の話題になった際には、必ずこの高額療養費を話題に出していましたが、ほとんどの方はこの存在すら知りませんでした。仮に知っていたとしてもなんとなくというイメージで、どの程度の医療費の場合に、どの程度のキャッシュバックがあるかということを具体的に知っている方はいらっしゃいませんでした。

 

ただこの高額療養費は、日本で暮らしていくうえでは必ず知っておきたい制度ですし、この制度を知らない(考慮しない)で医療保険やがん保険に加入していたとしたら、保障がダブってムダな保険料を払っているということになる可能性があります。