がんは罹患するとお金がかかる病気であるため、がん保険への加入を検討している人も少なくないでしょう。しかし、そのような民間保険を考える前に、まずはがんでの入院や治療の際に使える公的保障について知っておくべきと、株式会社ライフヴィジョン代表取締役のCFP谷藤淳一氏はいいます。なかには多額のキャッシュバックを受けられるケースも……。本記事では、宮沢里美さん(仮名・40歳)の事例とともに、知らないと損する高額療養費制度について解説します。
年収500万円の40歳美容師「肺がん医療費・70万円」も、1年11ヵ月後市役所へ駆け込むと…まさかの「55万円」キャッシュバックで大歓喜【CFPが解説】 (※写真はイメージです/PIXTA)

早期肺がんの入院手術で70万円の自己負担

長野県諏訪市在住、個人事業主として美容院を運営している40歳女性の宮沢里美さん(仮名)。 宮沢さんは美容師になるための専門学校を卒業後、東京の美容院に勤務しながら技術を磨き、5年前地元に戻って、長年の夢であった美容院を開業しました。周辺には同業のお店も多く競争が激しいのですが、着実にファンを増やし、現在は従業員3名を雇ってお店を回しています。個人事業主のため、公的保障は国民健康保険と国民年金で、年収はおよそ500万円です。

 

そんな宮沢さんですが、約2年前に早期の肺がんが発覚。自宅近くの大きな病院で手術を受けました。幸い手術は成功し、がんの転移なども確認されず、その後は定期的に検査を受けながらいまに至ります。 そのとき支払った入院費用がおよそ70万円。とても大きな出費でしたが、ネットからの知識でがんになったら300万円程度のお金がかかると思っていたので、痛い出費と思いつつ70万円程度で済んだことを不幸中の幸いと思っていました。

 

ただ、4年ほど前に地域で活動するファイナンシャルプランナー(以下FP)にiDeCoなど運用に関する相談をした際、がん保険などの備えについて話題がふられたのですが「もう少ししてから……」と先送りにしてしまったことについては多少後悔もしました。 

 

ロボット手術で入院はわずか3泊4日

宮沢さんは約2年前、観光地としても知られる諏訪湖という湖のほとりにある、この地域の『がん診療連携拠点病院』といわれる大きな病院に肺がん手術のため入院しました。

 

宮沢さんが受けた手術は、ダヴィンチというロボットで行う手術。医師は患者さんから少し離れた場所にある操作台でロボットを操作し、ロボットががんを切除するというものでした。数年前に導入されたこのロボットを利用することにより精密な手術ができて、体にメスを入れる箇所を小さくできるため、復帰までの日数が短く(体への負担が小さく)なるということでした。

 

実際、宮沢さんの入院もわずか3泊4日で、がんで入院したら数ヵ月単位の入院が必須と思っていた宮沢さんや家族も拍子抜けしたほどでした。 退院後仕事の復帰も想像以上に早くできたため、約70万円の入院費用は痛手でしたが、頑張って働いて取り返そうと前向きになることができました。 

 

「すぐに市役所へ行ってください!」とFPから助言

お盆休みも終わり8月も後半に入ったころ、美容院の運営で忙しい日々を過ごす宮沢さんでしたが、4年前に始めた運用の状況などについて久しぶりに相談したいと思って、担当してもらっているFPと会うことにしました。考えてみたらがんを患ってからはバタバタしていて、一度も相談していないことを思い出しました。

 

そのFPに運用状況などをチェックしてもらい、今後に向けたアドバイスなどをもらったあと、いろいろと雑談をしていたのですが、自身のがんのことも話題になり、ロボットによる最先端の手術でわずか3泊4日の入院で済んだこと、一方入院費用は総額で70万円ほどになり以前話しをもらったときにがん保険を真剣に考えておけばよかった、などといった話しをしました。

 

するとそのFPは 「その入院の正確な日付はいつですか?」と聞いてきました。「入院が1ヵ月早ければ毎年8月15日に行われる諏訪湖の花火大会が病室から見れたかも……」などと思ったことを思い出し、9月半ばであることを伝えると、そのFPは真剣な表情でこういってきました。

 

「すぐに市役所へ行って手続きをしてください!」