40歳のサラリーマン「32年ローン」で住宅購入…現実味を帯びる老後破産
東京23区内の新築マンションの平均価格が1億円を超えたことが大きな話題になっています。戸建てに関しては地域によって土地価格の状況が異なるため一概にはいえませんが、上物に関しては建築資材や人件費の上昇で高くなっており、マンションと同様と、価格は高騰していると考えられるでしょう。
国土交通省『令和4年度住宅市場動向調査』によると、注文住宅を建てた人(一次取得/世帯主)の平均年齢は39.5歳、世帯年収は784万円(三大都市圏/一次取得)でした。購入資金(土地+建物)は首都圏で7,960万円。そのうち借入金は4,706万円、返済期間は32.2年というデータが出ています。
上記の平均通り、40歳で土地と建物を合わせて約8,000万円のマイホームを実現した場合のマネープランをみていきましょう。返済方式は元利均等、金利は1%と仮定すると、利息分は794万9,700円と、ちょうど年収ほどになります。また、4,706万円を32年で返済するとなると、月々の返済は14万3,255万円。世帯年収に占める返済割合は21.9%ということになります。
適正なローンの返済割合は20~25%とされていますので、無理のあるプランではなさそうです。一方で、完済となる年齢が72歳というのは少し気になるところ。原則として年金受給開始年齢は65歳ですから、およそ7年間、年金生活でありながら、ローンも返済していく期間が発生することになります。
厚生労働省によると、厚生年金受給者の平均年金額は月14万円程度。65歳以上男性に限ると月17万円、女性だと10万円程度。共働き夫婦であれば、月27万円程度を手にする計算です。無職の高齢者夫婦の平均消費支出は22万~23万円程度とされているため、天引き額を考えると「年金でなんとか生活ができる」という水準であることがわかります。
年金をローンの返済に充てられないのであれば、月14万円ほどの返済のために「貯蓄を取り崩していく」ほかありません。年金生活者にとっての貯蓄は、「転ばぬ先の杖」。生活費の補填や、病気やケガなど万が一の事態への備えとなるものです。収入が年金のみに限られる状況下では、減少スピードをいかに抑えられるかがカギになります。
上記のシミュレーションの通り月の返済額が14万3,255円の場合、7年間の返済総額は1,200万円超。大事な貯蓄を取り崩してこの費用を賄おうとした場合、「人生100年時代」とされる昨今では、老後破産が現実味を帯びてきます。