注文住宅の世帯主(一次取得者)の平均年齢は39.5歳。32年前後のローンを契約して、マイホームの夢を実現する人が多いようです。しかし、その平均的なプランではローンの完済時期は72歳。年金生活に突入した後も、貯蓄を取り崩して返済に充てる期間が発生することになります。今回は、「繰上返済」を行って年金受給が始まる65歳までにローンを完済するプランをシミュレーションしてみます。
32年ローンで注文住宅を建てた40歳・サラリーマン…“老後破産”回避のための〈繰上返済〉をシミュレーション (※写真はイメージです/PIXTA)

65歳完済をめざした繰上返済…月の返済額は?

こうしてみていくと、40歳で32年ローンを組むのはリスキーだという結論に達します。

 

では65歳で完済できるよう、25年ローンを組んだとすると、返済プランはどうなるのでしょうか。上と同条件で考えると、利息分は614万6,693円と200万円近く減額に。一方で月々の返済は17万7,356円と月3万円ほど上昇し、世帯年収に占めるローン返済負担率は21.9%から27.1%と5ポイントほど高まります。

 

27%超は結構な負担を感じるものと推測され、これが25年間続くことを鑑みると、あまり賢い選択ではないかもしれません。

 

では、繰上返済という選択はどうでしょうか。借入条件は前出と同様とし、5年に1度、繰上返済をするとします。

 

総務省の『貯蓄・純貯蓄・負債現在高階級,年間収入階級別1世帯当たり1か月間の収入と支出 』(23年1~3月)をみると、世帯年収750万~800万円世帯では1ヵ月あたりの貯蓄純増が10万6,212円。貯蓄の金額の3割を繰上返済にまわすことを想定すると、1回あたりの返済額は200万円ほど。そうすると、完済となるのは25年後。利息分は637万8,066円となり、32年返済時に比べて160万円ほど減る計算になります。

 

しかし、繰上返済に際して考えなければいけないのが手数料。金融機関によって無料~数万円程度と違いはありますが、繰上返済のたびに手数料が発生することを考えると、これを何回も重ねるとその負担は軽視できません。手数料も念頭に入れて、繰上返済のタイミングを検討する必要があります。

 

今回のシミュレーションでは繰上返済で返済回数を減らしましたが、回数は減らさずに月々の返済額を減らしていくという方法もあります。諸々の条件等は前出の通りに返済額を変えていくと、5年目以降は13万6,189円、10年目以降は12万8,0480円、15年目以降は11万7,884円、20年目以降は10万4,124円と確実に減っていくことがわかります。そして、25年目以降、年金受給の始まる65歳頃からは月の返済額が8万2,219円と最終的に10万円を大きく割り込む水準になります。

 

利息額は706万7,355円と、回数を減らしたパターンと比較して68万円ほど高くなりますが、繰上返済なしの32年ローンと比べれば、88万円ほどの利息圧縮効果が期待できます。回数が変わる返済プランに比べて、現役引退後の月の返済負担を軽減できるため、このほうが安心できるという人もいるでしょう。

 

年金生活に突入した後の不安を軽減するために、返済回数を減らして早期に返済を終えるのか、月の返済額を減らして手元に現金を残しながら同時に積み立て投資などで運用を行うのか、選択すべきプランに正解はありません。完済時期の収入や貯蓄の状況を勘案し、老後破産を避けるため、現役引退後の貯蓄の減少スピードを抑えられる返済プランを検討することが重要です。