初めてマイホームを購入する人の平均年齢はだいたい40歳といわれていますが、地方公務員の中には、20代で新築マイホームを実現する人が珍しくありません。信用力の高さから、金融機関も前のめりになって住宅ローンを貸してくれるためです。しかし、融資担当者の勧めるままのプランでローンを組んでしまえば、家計が苦しくなることは明らかです。医療費などの突発的な出費が発生すれば、あっという間に「ローン破産」に陥るリスクも。地方公務員の給料事情と住宅ローン契約時に意識したいポイントをみていきましょう。
28歳・地方公務員“フルローン”で家を買う…借り入れ総額は〈年収の10倍〉。昇給が先か、「ローン破産」が先か (※写真はイメージです/PIXTA)

「豊かなセカンドライフ」実現のためには、融資担当者の甘い誘惑を断る意思を

その信用力から全額ローンで、20代でもマイホームが実現する公務員。ただし、適正とされる限度額を超える水準の借り入れを勧めてくる融資担当者の言葉を自らの意思で遮らなければ、毎月の返済で一杯いっぱいの生活を送ることになってしまうでしょう。

 

一般的には、年収に占める適正なローンの返済割合は20~25%ほどとされています。28歳の地方公務員を例に挙げると、月収23万4,204円+賞与4.45か月分で年収は385万2,655円。年収の20%は77万531円、25%なら96万3,163円ですから、毎月のローン返済額として適正な水準は6万4,000円~8万円ほどということになります。

 

一方で、金融機関は収入の安定している公務員に対しては、返済負担率にして30~35%の程度のフルローン契約を勧めてくるケースもあるようです。

 

仮に「年収の10倍・頭金なし」のローンを組んだ場合、借入金額は3,850万円。元利均等方式で固定金利1%、返済期間35年とすると、返済総額は4,500万円超。利息分は714万円にのぼり、毎月の返済金額は10万8,679円となります。「賞与も確実に出るでしょうし、問題ないですよ」という口車に乗せられて、言われるがままのローンを組んでしまえば、月の返済額が「適正な水準」に比べて3~5万円も増えることになります。

 

仮に「車が故障して修理費が…」「病気にかかって医療費が…」というような突発的な出費が発生すれば、家計はあっという間に破綻にむかうことになるでしょう。

 

そして、住宅ローンの返済は30~35年といった長期戦になりますから、契約時には完済時の年齢についても考える必要があります。ここで例として取り上げた28歳の地方公務員であれば、30年ローンでも60歳になる前に返済が終わりますので、良いタイミングだといえそうです。

 

しかし、仮に40歳のときに30年ローンを組むとなると、少し心配です。完済時の年齢は70歳ですから、50代後半になって「定年退職後も返済が続くのか…」と考えると不安でいたたまれなくなり、繰り上げ返済が頭をよぎるかもしれません。それまでに積み上げてきた大事な貯蓄を繰り上げ返済に充てれば、住宅ローンに関する悩みは解消されるでしょうが、その分、貯蓄=老後資金が減りますから、引退後の生活に不安を持ち越すだけという結果になるでしょう。

 

信用力の高さから、融資担当者が一般的な会社員よりも「多めの借入」を勧めてくるケースも多い公務員。「自分は属性が高いのだ」と優越感を抱いてギリギリのローンを組んでしまえば、昇格・昇給を迎えるよりも前に「ローン破産」に陥るリスクが高まります。

 

「現役時代に返済が終わるように」という計画のもと、20代のうちに住宅購入の決断をするのはアリといえますが、金融機関の甘い誘惑を強い意志で跳ね除け、返済負担率を20~25%の水準に収めるよう意識することが重要です。

 

毎月余裕を持ってローンを返済しつつ、積み立て投資などに回せるように手元にキャッシュ残しておくことを意識すれば、引退後は、持ち家で豊かなセカンドライフを送れることでしょう。