「老後、どれだけお金があればいいですか?」という誰もが問いかけたことのある、こんな質問。「夫婦で2,000万円必要」「いや800万円あれば十分だ」など、いろいろなアドバイスを聞きますが、その通りに準備を進めても老後破綻という最悪の結末を迎えるケースがあります。なぜなのでしょうか。みていきましょう。
老後資金「2,000万円なんていらない。800万円あればいい」を信じた〈60代夫婦〉の大後悔「私たちはどこで間違えた?」 (写真はイメージです/PIXTA)

老後を襲う最悪の事態、3つ

確かに、直近の調査結果をみると「老後資金は800万円」でも十分な気がしてきます。しかしそれを信じて、これから年金生活に入る65歳の高齢者夫婦が「よし、自分たちには800万円以上の貯蓄があるから余裕だ」と考えていいのでしょうか。

 

答えは明確なものはなく、800万円で足りるかもしれないけど、最悪、お金が足りなくて老後破綻するかもしれない……と何とも曖昧なことしかいえません。しかし知っておきたいのは「最悪のケース」。老後、どのような事態が考えられるのでしょうか。

 

老後の最悪の事態①:突発的な出費

高齢者といっても、一人ひとりライフスタイルも家族構成も異なり、何にいくらかかるかは人それぞれ。ときに、突発的にお金が必要になることもあるでしょう。

 

年を重ねるごとに当然、疾病や介護のリスクは高まり、「医療費」や「介護費」など、想定以上の出費を余儀なくされることも。さらに高齢者の場合、持ち家率は9割近くにもなりますが、住み続けるためには「維持費」がかかります。10~15年で外壁や屋根などの修繕を行いますが、台風や地震などの災害で大きな修繕が必要になるケースも十分に考えられます。また「冠婚葬祭」に関わる費用も、収入が年金のみというケースが多い高齢者にとっては大きな負担。「お祝い事が重なり赤字が拡大」ということも珍しくありません。

 

老後の最悪の事態②:想定以上の物価高

昨今、私たちを苦しめている物価高。デフレが当たり前になっていた日本人にとっては「日常品が値上がりする」という感覚は久々で、戸惑っている人も多いでしょう。収入手段が限られる高齢者にとって、急な物価上昇は致命的であり、余裕ある生活もあっという間に窮地に……よくある話です。

 

老後の最悪の事態③:年金の目減り

年金を受け取り始める時点(65歳)における年金額が、現役世代の手取り収入額(ボーナス込み)と比較してどのくらいの割合かを示す「所得代替率」。2019年時点で60%強となっていますが、2040年代中ごろには50%ほどになるという試算が出ています。つまり年金は2割ほど目減りすることが確実視されているのです。年金収入が2割減少するということは、現在「2,000万円」とも「800万円」ともいわれている老後資金の不足額も、さらに拡大すると考えておいたほうがいいでしょう。

 

 

世の中で言われているアドバイス通りに準備したにも関わらず、老後破綻という最悪の結果に直面する高齢者夫婦。「きちんと準備をしてきたのに、私たち、どこで間違えてしまったのだろう……」と後悔するそもそもの理由は「老後のためにXX円必要」というアドバイスをそのまま自分たちに当てはめてしまったことにあります。

 

アドバイスは統計の平均値から導き出したもので、参考までに留めておくことが重要。また「老後」といっても、人によっては30年も、さらには40年も続くこともあります。その間、同じ状況が続くとは考えにくく、突発的にお金が必要になることもあるでしょう。アドバイスを参考にあとは個々でプランニング。さらに物事に柔軟に対応していくしなやかさも求められます。