高さ60メートル超え、20階以上の高層マンションであるタワーマンション。以前は富の象徴として富裕層から支持を集め、段々と一般層にも人気が広がりました。昨今は終の棲家として、高齢者の購入も目立つといいます。しかし、思惑通りにいくとは限らないようです。みていきましょう。
2030年「タワマン大崩壊」…60代高齢者夫婦も後悔する「あまりに酷い現実」 (写真はイメージです/PIXTA)

次に心配される「タワマン2030年問題」の深刻度

昨今、高齢者がタワマンを購入するケースが増えているといいます。ある地方の駅前タワマンの最上階・4LDKを購入した60代夫婦もそう。冬になると大雪になることも珍しくない地域。戸建てに住み続けるには冬の除雪があまりにもネックだったといいます。さらに高齢となれば車の運転も難しくなり、ますます生活が大変になることは確実でした。

 

――戸建ては維持するのも大変だったので、思い切って住み替えました

 

「自宅を売却」→「タワマン購入」は正解だったと振り返ります。タワマンの代名詞といえば「眺望の素晴らしさ」ですが、高齢者が注目するのはその利便性。特に駅前再開発とセットで建てられるタワマンは、商業施設や行政機関と一緒になった複合施設のケースも多く、施設内で生活に関わるほぼすべてのことが完了。駅直結だからどこに行くにしても便利。高齢となり足腰が悪くなっても不自由なく暮らしていけると、支持を集めています。

 

ただそんな状況に対して「2030年問題」として警鐘を鳴らす専門家も。

 

タワマンで心配されるのが建物の老い。ほかのマンションと同様、完成から15~20年で大規模修繕が必要ですが、まだ修繕の手法が確立されていないタワマンは、積立金で賄えることはほとんどありません。さらに工事費も高騰し、15~20年前に設定した積立金ではとても間に合わない事態に陥っているのです。

 

このままではせっかくのタワマンが廃れていってしまう……住民からプラスαで費用を募るしかありませんが、すでに高齢化した住民の中には「(年齢から考えて)このあと何十年も住めるわけでもないのに、さらにお金を出すなんてバカバカしい」と拒否する人が続出することが考えられます。合意形成ができず修繕は棚上げ。豪華を誇っていたエントランスはボロボロとなり、故障した設備はそのまま放置。そのようなタワマンには新しい住民が引越してくることはなく資産価値も暴落。売ろうとしても売れず、八方塞がりの高齢者だけのスラム化したタワマンになる……そんなストーリーです。

 

2030年には、築30年以上のマンションが405万戸にもなるとされ、その数はさらに増えていくといわれています。そのなかには規制緩和で次々と建てられた都心の湾岸タワマンも含まれ、スラム化問題に直面しているタワマンも当然あるだろうというのです。

 

――まさか、こんなことになるなんて

 

前出の高齢者も「タワマンへの住み替えは正解だった」と感じているようですが、それがいつまでも続く保証はありません。なんとも極端な話ではありますが、「タワマンの2022年問題」のように専門家の意見が大外れとなる可能性もありますし、ズバリ的中の可能性も捨てきれません。

 

合意形成については賛成割合を引き下げる検討がされ、スラム化マンションの増加をなんとか防ごうという動きがみられます。一方で修繕金不足に関してはすでに問題が顕在化。さらに深刻化するだろうといわれています。そう考えると「2030年タワマン問題」が現実のものになるかは、五分五分といえるでしょう。

 

そもそもタワマンだろうが、戸建てだろうが、「終の棲家」を購入したら、最期まで安心・安全が約束される、というのは甘い考えなのかもしれません。万が一のときは売ることも容易にできるくらいの物件が、「終の棲家」としては丁度いいのかもしれません。