少子高齢化が進むなか、高齢者の5人に1人が1人暮らしをしている日本。さまざまな課題をはらむ高齢者の1人暮らしですが、一方で課題を解決するためのツールも存在します。そこで本記事は、Aさんの事例とともに、高齢者の1人暮らしで大切なことについて、株式会社アイポス代表の森拓哉CFPが解説します。
夫の死亡保険金500万円・85歳年金暮らしの女性「老人ホームはいや」…1人暮らしを望む高齢者の“切実な訴え”【CFPが助言】 (※写真はイメージです/PIXTA)

高齢者の1人暮らしが増加する日本

日本の少子高齢化が進むなかで、高齢者の1人暮らしが増え続けています。総務省が2020年に発表した国勢調査によると日本の世帯数5,583万世帯に対して、約38.0%が1人暮らしです。65歳以上の高齢者単身世帯は671万世帯であり、高齢者の5人に1人が1人暮らしをしています。特に女性の単身世帯は440万世帯もあり、割合が高いことが特徴です。生涯未婚率(内閣府発表によると50歳時に未婚の人の割合は男性28.3%、女性17.8%)の上昇や家族構成の変化によって、今後ますます高齢者の1人暮らしは増えることが予想されます。

 

若いうちの1人暮らしは自由で魅力があります。一方、高齢になると1人暮らしの自由さは問題へと波及します。自分の健康や生活の維持、そしてお金の管理といった点に課題が集中して、管理をしてもらわないと、自分が自由なだけでは課題に対処できないのです。

 

できるだけ1人で暮らしたい85歳・女性のAさん

たとえば、85歳のAさんは、夫と60年前に結婚し、1人の息子を授かりました。無事社会人として独り立ちしたものの、息子は海外勤務が長く続き、なかなか帰省することができません。Aさんの夫は80歳のときに脳梗塞を発症し、Aさんの献身的な介護のもと旅立ちました。そして、Aさんはいま1人暮らしをしています。

 

Aさんはとても丁寧に生きてこられた方で、「自分のことはできるだけ自分でする。また自分らしく生きたい」という強いお気持ちがあります。夫の遺族年金を含めた安定した年金収入月15万円と、夫が遺した死亡保険金500万円があります。経済的な問題は発生しておらず、老人ホームなどへの入所も頭をよぎります。しかし、Aさんは「老人ホームへの入所はいや……できるだけ1人で暮らしたい」といいます。

 

Aさんのお気持ちは素晴らしいものですが、Aさんたち高齢者の1人暮らしは、さまざまな課題をはらんでいます。一方、課題を解決するための社会のツールも数多く存在します。高齢者がご自身の生活を自分らしく送るために役立つツールを少し詳しくみていきましょう。