ビットコインの“ドミナンス低下”をどう捉えるか?
リップル訴訟問題に進展が見られた後の相場では、ビットコイン・ドミナンスの動きが特徴的でした。ビットコイン・ドミナンスとは、ビットコインの時価総額が暗号資産市場全体のなかでどれだけ占めているかを示す指標です。この指標は、ビットコインの影響力と市場のリスク選好度合いを測る上で役立ちます。
今年に入ってから、ビットコイン・ドミナンスは急上昇し、2023年6月にはおよそ2年ぶりに50%を上回りました。これは、米国においてアルトコインの取り締まりが厳しくなり、さらには本来、安全資産として見られるステーブルコイン(法定通貨と価値が連動した暗号資産)への不信感も強まったためです。ところが、今回の判決によってXRPを中心にアルトコインを物色する動きが強まり、ビットコイン・ドミナンスは急落しました。
通常、市場がリスクオフに傾いている時は比較的ボラティリティの小さいビットコインあるいはステーブルコインに資金が集まるため、ビットコイン・ドミナンスは上昇します。この時はアルトコインの投機的な売買も抑えられるため、上昇下落どちらの方向であっても相場が急変するリスクは小さいです。
一方、市場がリスクオンに傾いている時は、より大きなボラティリティを求めてアルトコインの売買が活発になるため、ビットコイン・ドミナンスは下落します。この時はアルトコインが循環物色により急騰する動きも目立ちますが、その後の急落によって、ビットコインも大きく下落するリスクが高まります。
直近、米国におけるビットコイン現物ETFの審査に関する続報も見られず、ビットコインの価格は430万付近で停滞していました。そのなかで、XRPの裁判に関するポジティブなニュースがあり、投資家はより大きなリターンが期待できるアルトコインの売買に動いています。
実際にビットコイン・ドミナンスが下がるなかで、一部でアルトコインの急騰が見られます。また、それとともにビットコインの価格はじりじりと下がっています。
このままアルトコインの投機的な値動きが目立ち、ビットコイン・ドミナンスが急落する展開となった場合には、ビットコインの急落にも警戒しなければならないでしょう。
松嶋 真倫
マネックス証券 マネックス・ユニバーシティ
暗号資産アナリスト