2023年2月発表の「人口動態統計速報」では、1899年の統計開始以来、初の80万人割れを記録。こうしたなか、2022年4月より不妊治療が一部保険適用されました。しかし、多くの共働き夫婦は、妊娠・出産にともなって世帯年収の減少が避けられません。『年収443万円 安すぎる国の絶望的な生活』(講談社現代新書)の著者でジャーナリストの小林美希氏が、日本の共働き夫婦が直面する深刻な問題について、事例を交えて紹介します。
世帯年収900万円の30代夫婦、不妊治療に戦々恐々…「お金がないから子をもてない」という日本の絶望【ジャーナリストの実録】 (※写真はイメージです/PIXTA)

不妊治療は2022年4月から「一部保険適用」だが…

2022年の4月から保険適用されたといっても、この先、いくらお金が出ていくのか。体外受精などの「基本治療」はすべて保険適用といっても、「先進医療」もすべてとは限らないんですよ。年齢と回数にも制限があるし。

 

初めての治療開始の時点で女性が40歳未満なら1子ごとに通算6回まで、40歳以上43歳未満なら通算3回まで。そう言われても、どうなるかまったく分からない。治療が高額だと自己負担額も制限がかかるといっても、それって、いくらになるのか。

 

職場の先輩は体外受精をしないと子どもが授からないということで、保険適用の前ですが、子どもができるまで、うん百万円とられたって言うんです。先輩もコツコツ貯金するタイプだったからなんとかなったそうですが、話を聞いていると、なんだか絶望的になって、自分の顔が真っ青になっていったのを覚えています。

 

先輩のお子さんは2歳くらいになって、受精卵を凍結して保存しているから2人目を望むこともできるそうですが、奥さんは働いていなくて、経済的に第2子はキツイなぁ、と言ってました。お金がないから子どもをもてないなんて。おかしくないですか? 少子化なんだから、なんとかしてよー。子どもが欲しい人がここにいるのに。そう思いません?

 

 

小林 美希

ジャーナリスト