住宅購入者の過半数は「住宅ローン」の知識が不十分
住宅購入者のローン負担はどれほどなのでしょうか。たとえば注文住宅。物件価格の1割程度を頭金として用意し、30年で返済したとします。金利は1%、返済は元利均等方式とすると、元金4,241万円に対し、利息分は669万6,433円、月々の返済は13万6,407円となります。賃貸住宅の平均家賃と比較すると、毎月5万円の負担増になるということです。
――それくらいの負担なら……よしっ!
そのようにマイホーム購入へと舵をきったとしましょう。ただ勢いだけで住宅購入を決断すると、あとで後悔することになるかもしれません。
住宅金融支援機構『住宅ローン利用者調査(2023年4月調査)』によると、住宅ローンの金利タイプは,「変動型」が72.3%、「固定期間選択型」が18.3%、「全期間固定型」が9.3%。融資率は、どの金利タイプでも物件価格に対して「90%~100%以下」が最多となっています。
また年収に占めるローン返済額の割合である返済負担率は「変動型」「全期間固定型」は「15%~20%」が最多。一方、「変動型」で返済負担率「30%超え」は10.4%。この水準になると、「かなり住宅ローン返済がキツイ」となりますが、そんな人たちは意外といることが分かります。
また変動金利の場合、金利リスクをしっかりと理解していることが必須ですが、「適用金利や返済額の見直しルール」を理解しているのは59.4%、「将来の金利上昇によって返済額がどれほど増えるか」を理解しているのは53.4%、「将来の金利上昇に伴う返済額増加への対応策」を理解している人は50.3%でした。また将来金利が上昇した時に返済額は増加しますが、このようなことが起きた時の対応策が「検討がつかない/わからない」が21.5%と、5人に1人の水準です。
つまり住宅ローン利用者の5割程度は金利に対して理解不足で、万が一金利上昇となったら、5人に1人は右往左往するだけ、という状況だということです。
長らく超低金利が続く日本。昨今は利上げが世界の潮流ですが、日本は低金利のまま。そのため、金利が上昇することに対して、いまいちピンとこない人が多いというのが現状です。仮に前出の返済プラン、金利が1%→2%に上昇したとしたら、月々の返済は13万6,407円から15万6,755円に。月々2万円もの負担増になります。また利息分は669万6,433円→1,402万1,863円と2倍以上。このようなこともイメージできていない人が実に多いのです。
――金利なんて、ずっとこのままだよ
そう思っている人もいるかもしれませんが、一般的にローン返済は30年近く続きます。その間、金利が一定という状況のほうが非現実的。万が一、金利上昇に直面したら、どのように対応すべきか見据えておかないと、最悪、自己破産という酷い目にあってもおかしくはありません。
一生に一度の買い物である住宅購入。せっかく手に入れた幸せを不本意なカタチで手放すことのないよう、最初からしっかりとリスクヘッジについて考えていきましょう。