国税庁の民間給与実態統計調査によると、令和3年の給与所得者の平均年収は443万円。「年収が400万円あれば、安心して暮らせる」との声もありますが、現実は世帯年収850万円でも節約の日々といった厳しいものです。本記事では、Aさんの事例とともに、サラリーマンのランチ代から紐解く日本の懐事情について、FP1級の川淵ゆかり氏が解説します。
世帯年収850万円だが…35歳妻「ランチは夜ご飯の残りもの」、ランチ代をケチる「日本のサラリーマン」の懐事情【FPが解説】 (※写真はイメージです/PIXTA)

世帯年収850万円の35歳Aさんの切実すぎるランチ

1人ひとりの収入は少なくても「収入合算」や「ペアローン」を利用して、理想の住まいを手に入れるご夫婦もいらっしゃいます。ご紹介する夫婦共働きのAさんご夫婦も2人で一戸建てを購入したのですが、世の中の変化に翻弄されてしまい……。

 

基礎化粧品やサプリメントの製造会社に勤める35歳のOLのAさんは、長い交際期間の末、4年前に同い年の男性と職場結婚しました。年収はご主人の年収は約500万円、Aさんは約350万円です。

 

勤務している会社は大きいほうではありませんが、通販で需要のある商品製造で安定した売り上げを続けていました。夫婦合わせると約850万円の世帯収入ですから、将来にはなんの不安もなく、都内にある本社に通勤しやすいようにと、昨年は都内に貯蓄と住宅ローン7,000万円で一戸建てを購入しました。

 

「住宅展示場等を観てキッチンをグレードアップしてしまったり、新型コロナでリモートワークがあったことで書斎を追加したりと当初の予算をオーバーしてしまいました」

 

<住宅ローン>

 

借入額:7,000万円

毎月の返済額:約20万円

35年ローン変動金利型

 

「住宅ローンの返済が終了する年齢は69歳ですが、将来の金利もどうなるかわかりませんので、繰り上げ返済でできるだけ早く完済したいと思っています。子供も欲しいし、私たちの両親もまもなく70代に入りますから、介護の心配もあります。今後はお金がかかってきますので、贅沢はできません」

 

しかしながら、昨年、新居に引っ越ししたころから会社の状況が変わってきます。

 

「光熱費や原材料といったコストの値上がりが、年末のボーナスに響いてきました。それどころか、今年に入って売り上げも落ちてきたのです。サプリメントは高齢者に人気だったのですが、電気料金や食料品の値上げが家計に響いてきたようで、それが解約に繋がっているようです。工場のパートさんの賃金も上げないといけない、という理由もあって、会社はとうとう早期退職の希望者まで募ってきました」

 

新型コロナの期間をなんとか乗り切ってきた企業でも、値上げの影響で苦しんでいるケースは多いです。

 

「夫婦で定年退職まで働くのが希望ですからなんとか頑張って乗り切っていきたいと思っています。ボーナスカットが響いていますが貯金も増やさないといけないので、主人には申し訳ない気持ちもありますが、お弁当も昨夜の残り物を詰めたりして夫婦で頑張っています」

 

他人はランチにどれだけお金をかけている?

Aさんは節約のためにお弁当を毎朝作っています。参考として世間のランチ事情についてもみてみましょう。

 

新生銀行が毎年行っている「サラリーマンのお小遣い調査」にランチ代の調査結果が出ています。2023年の発表内容では、男性会社員の1日のランチ代は624円、女性会社員の場合は696円となっています。単純に平均すると全体では660円です。ただし、昨年から食料品や光熱費が大きく値上がりをしています。来年の調査結果ではさらにランチ代はアップしてくると思われます。

 

なお、男性・女性ともお弁当を持参する割合が最も高く、男性で34.5%、女性で48.8%を占める結果となっています。お弁当を毎日作るのは大変ですが、外食やコンビニ食がメインとなっている人は、週に1回お弁当に変えるだけでもお財布に余裕が出てきます。

 

昨今の値上げは、特に年金生活者には厳しいものになっています。今後も人手不足による人件費等の高騰が商品の値上がりにつながっていきそうです。高齢者はお財布に余裕があるようなイメージがありましたが、光熱費や食料品の値上げでお財布の紐もどんどん固くなっていきそうですね。

 

国内の消費がダウンしてしまうことで海外に目を向けて展開を計画する企業も増えてきています。Aさんの会社も業績が回復すればいいですね。

 

 

川淵 ゆかり

川淵ゆかり事務所

代表