近年、共働き世帯が増えたこともあり、ペアローンを組みマイホームを購入する世帯が増えています。しかし、住宅ローンは「綿密な返済計画」が大前提。不動産業者や銀行員の“営業トーク”を真に受けた結果、「こんなはずではなかった」と後悔するケースも……。FP Office株式会社の須藤雅FPが、実際にあった夫婦の事例から住宅購入時のポイントを解説します。
銀行員「大丈夫です。貸せます」を信じて大後悔…年収550万円の33歳・会社員が破産を覚悟した「住宅ローン返済額」【FPの助言】 (※写真はイメージです/PIXTA)

年間収支を計算して判明した「1年前からの赤字」

S家の“産休・育休前”の「年間収支」

では、次にS家の年間収支を計算していきます。まず奥様が産休に入る前、年間収支はどうなっていたのでしょうか。

 

Sさんの年収550万円と、奥様の年収350万円を合わせると、世帯収入は900万円。このうち、自由に使うことのできる可処分所得は約690万円です。また、Sさんの家計簿アプリを拝見したところ、月々の支出は先述した住宅費を除くと約30万円前後となっていました

※ 保険積み立てや確定拠出年金の金額も含む。

 

月々の生活費30万円×12ヵ月=360万円

360万円+年間にかかる住宅費269.4万円=629.4万円

 

可処分所得690万円-年間支出629.4万円=65.1万円(黒字)

 

したがって、このままいけば年間での現金貯蓄が約65万円ずつ増えていた計算になります。

 

S家の“産休・育休後”の「年間収支」

では、産休・育休取得後の年間収支を計算してみましょう。

 

もともと奥様の年収は約350万円でしたが、育児休業に入った初年度の1年間を計算すると、奥様の収入は約240万円。2年目は育児休業を延長し給付金を受けたため、年間収入は約173万円となりました。

※ 2ヵ月分の給与を含む。出生一時金などは出産にかかった費用と相殺して計算。

 

育児休業給付金は税制面で優遇され、税金が免除されます。これを考慮し、Sさんのものと合わせて可処分所得を計算すると、下記のようになります。

 

■1年目

680万円-生活費629.4万円=50.6万円(黒字)

 

■2年目

613万円-生活費629.4万円=▲16.4万円

 

2年目にマイナス収支となりました。しかし、2年経過しても保育園に入園できず、奥様はいったん退職。育児に専念することとなりました。したがって、3年目はSさんの可処分所得約440万円での生活を余儀なくされます。

 

■3年目

440万円-生活費629.4万円=▲189.4万円

 

年間の生活費のマイナスが大きくなっていることがわかります。Sさんはこのような状況で、経済的にも精神的にも不安が大きくなり、破産も覚悟していました。ただ、マイホームを手放すという「最後の手段」を選ぶ前に、なにか別の良い方法はないかと、FPに相談したというわけです。