近年、共働き世帯が増えたこともあり、ペアローンを組みマイホームを購入する世帯が増えています。しかし、住宅ローンは「綿密な返済計画」が大前提。不動産業者や銀行員の“営業トーク”を真に受けた結果、「こんなはずではなかった」と後悔するケースも……。FP Office株式会社の須藤雅FPが、実際にあった夫婦の事例から住宅購入時のポイントを解説します。
銀行員「大丈夫です。貸せます」を信じて大後悔…年収550万円の33歳・会社員が破産を覚悟した「住宅ローン返済額」【FPの助言】 (※写真はイメージです/PIXTA)

貯蓄を取り崩しながら無理なく節約!7年目で「黒字転換」へ

収支の変化がわかったところで、筆者とSさんは話し合い、生活費の見直しを行いました。食費や交際費、保険料、通信費など、ストレスがかからない範囲で無理なく削減できるよう見直しを行った結果、生活費は月々5万円ほど削減できそうです。月々5万円削減できれば、1年間にかかる生活費は629.4万円から569.4万円となります。

 

これをもとに今後のマネープランを立てると、収支は下記のようになります(なお、赤字分は貯蓄額の500万円から取り崩します)。

 

■4年目
440万円-生活費569.4万円=▲129.4万円
(貯蓄500万円-129.4万円=残額370.6万円)

 

■5年目
(貯蓄額370.6万円-129.4万円=残額241.2万円)

 

■6年目
(貯蓄額241.2万円-129.4万円=残額111.8万円)

 

■7年目
子どもが小学校に入学するタイミングで、奥様の復職計画を立てます。復職後の年収は300万円の見込みです。そうなると、S家の可処分所得は440万円から約630万円となります。

 

630万円-生活費569.4万円=60.6万円(黒字)

 

復職するという条件付きではありますが、7年目でマイナス収支が終わり、プラスへ転じることができそうです。ここまで試算し、自宅の売却はいったん保留として、生活費の見直しなどでできることから改善していこうと結論が出ました。

 

◆まとめ

今回の試算では4年目~7年目のあいだでの保育園入園や奥様の復職は考慮していませんが、もしも保育園の入園が叶い、奥様の復職が早まれば、試算よりも早く収支がプラスに転じる可能性があります。

 

また、そのほかにも、昨今の物価上昇による生活費の上昇やSさんの昇進などによる収入の増加など、収支が変動する要因は他にもいくつかあります。

 

経済的困窮を目の前にし、マンションを買ったことを後悔していたSさんですが、FPに相談したことで、自身にできることがまだまだ残されていることと「せっかく買った自宅を手放したくない」という思いに気づきました。「今後の見通しが数字で可視化でき、安心材料になった。相談してよかった」とSさんはいいます。

 

マイホーム購入というのは大きな買い物となりますので、諸制度を理解のうえ、自分のライフプランを踏まえて最適な方法を見出すことが理想的です。その際はファイナンシャルプランナー等のお金の専門家にも意見を聞きながら、将来設計を行うことをおすすめします。

 

 

須藤 雅

FP Office株式会社

ファイナンシャルプランナー