妻の父親が謎の激昂…妻「契約をキャンセルしたい」
住宅メーカーでの次の打ち合わせの際、予定どおり妻Wさんのお父さんもやってきました。担当営業マンは丁寧に間取りや資金計画書などを説明していたのですが、見る見るうちにお父さんの機嫌が悪くなっていきます。
「6,200万円? なぜこんなに高いんだ。ぼったくりじゃないのか」
そう強い口調で言う父親に、担当営業マンは冷静に答えます。「まず土地が60坪で2,800万円であること、加えて近年は建材価格が上がっていることが挙げられます。外構費などの諸費用を除いたらそれでも決して高くはありません」
父親は露骨に舌打ちをしてこう続けます。「俺が建てた時は土地込み3,000万円だった。おまえのところはぼったくりだ」
営業マンはなにか反論するそぶりはありましたが、無言になりました。
「お父さん、失礼ですよ」見かねた夫のTさんが義父にそう言いました。「お父さんが買ったのは35年前だし、建物の性能も設備も違うでしょう。それに金利もいまは安いんです」
父親はさらに苛立ちを隠せない様子でTさんに言います。「偉そうに。お前の給料で払っていけるわけがないだろう。この書斎なんてなぜ必要なんだ、こんなもの要らない」これを聞いて夫Tさんも黙ってしまいます。
担当営業マンが言います。「Tさんがおっしゃるとおり、いまは金利も安く返済しやすいと思います」
「お前ら営業マンは全員詐欺だ! 口先で楽な商売しやがって」と父親は激昂。「こんな会社では買うな! 俺の知り合いの大工で建てれば3,000万円で済む!」
「いくら地場の工務店さんでも、この地域で土地込み3,000万円は無理かと……」担当営業マンは呆れたように言いました。
それまで黙っていた妻のWさんが口を開きます。「契約はキャンセルできませんか?」
担当営業マンはそれを聞いて絶句。その後こう言いました。「本契約されたのはご理解いただいていますか? 契約解除の場合は契約金額の10%の違約金が必要になります」
Wさんの父親はそれを聞いてさらに絶叫に近い大声を出し始め、住宅メーカーの男性スタッフ数名が部屋に入ってきました。机を蹴飛ばしたため支店長が「警察を呼ぶぞ」と言ったとたん、父親は急におとなしくなりました。
夫Tさんが謝罪し、妻と妻の父親を引き連れて退去しました。「僕のほうからあらためてお電話します、本当にすいませんでした」
父親は住宅メーカーの敷地から出たとたんで再度興奮し始め、「家なんか買わなくていい!」と何度も大声で叫ぶ始末。Tさんは義父がなにが気に入らなかったのかまったく理解できないものの、こうなるような気はしていました。父親は別に資金援助をしてくれるわけでもないのに、なぜこんなに威張るのか……。
数日たって落ち着いてから、夫Tさんは妻Wさんと話し合いを持とうとしますが、妻は「キャンセルしたい」と繰り返すばかり。
「子供じゃないんだからそれでは通用しないよ。契約行為はそんなに甘くない。なぜお父さんがあんなに怒ったのか説明してほしい」と夫は言いますが、納得いく答えはありませんでした。
だからあの父親の近くで住むなんて嫌なんだ……と心で思ったTさんは、数百万円になるであろう違約金を支払う算段を始めました。貯金はまったくないため、どうしよう……と悲しくなるばかりでした。