ビットコインへの期待を裏づける「金」との関係
そもそも、なぜビットコイン現物ETFがこれほどに期待されているのでしょうか。その理由は、「ビットコイン」と「金」との関係にあります。
ビットコインは金に似た性質を持つ“デジタルゴールド”として語られることが増えています。金の埋蔵量が限られているように、ビットコインの発行量も2,100万枚と決められているほか、金もビットコインも特定の管理者が存在しないため、国や企業の情勢に影響を受けづらいからです。
ここで金の歴史を振り返ると、いまでこそ金への投資はリスクヘッジ手段としても一般化していますが、そのきっかけとなったのはETFでした。2004年には、「SPDRゴールド・シェア(GLD)」という金ETF(図表2参照)が米国で承認されたことで、金市場に大きな影響を与えました。GLDの承認により、個人投資家や機関投資家が簡単に金への投資を行えるようになり、需要が急増。これにより金価格が急騰し、金に対する関心も高まったのです。
ビットコイン現物ETFが承認された場合、金と同様の効果が生じる可能性があります。ビットコインはいまでも暗号資産取引所を通じて売買が可能ですが、暗号資産そのものの理解がおよんでいないところもあり、多くの投資家にとって直接的に投資することは敷居が高いままとなっています。
一方、ETFは従来の金融市場においても馴染みのあるものであり、ETFの枠組みでビットコインへ投資できるようになることで、より多くの投資家が暗号資産市場に参入しやすくなることが予想されます。
最近では個人投資家だけでなく、機関投資家も暗号資産への関心を高めています。彼らが暗号資産へ投資する際には、現物を直接保有するよりもETFのような形で間接的にエクスポージャー(リスクにさらされている資産の割合)をとれたほうが運用しやすいでしょう。
ビットコイン現物ETFの承認が実現すれば、機関投資家の多様な投資戦略の一部としてもビットコインが取り入れられ、大きな資金が暗号資産市場に一気に流れる可能性があります。それによりビットコインの価格も大きく上昇することが期待できます。
2021年10月に米国でビットコインの先物をベースとしたETFが承認されたときも、ビットコインは高騰しました。つい先月には米SECによってレバレッジ型のビットコイン先物ETFも初めて承認されました。
しかし、やはり本命はビットコインの現物価格と連動したETFです。はたしてブラックロックがその重たい扉を開くのか、今後の相場を占うためにも、審査の状況は注意して見るようにしましょう。
松嶋 真倫
マネックス証券 マネックス・ユニバーシティ
暗号資産アナリスト